2019/12/06

多項式(補題)

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第2節、多項式に関する補題です。
補題 f(x)f(x)K 内の次数 n の既約多項式とするとき、0と異なる2つの K 内の多項式でそれらの次数が n より小、しかもそれらの積は f(x) で割りきれるようなものは存在し得ない。
この補題を背理法を使って証明しています。
証明 この命題を背理法で証明するために、g(x),h(x)n より小さい次数の多項式で、それらの積が f(x) で割り切れるものとしよう。そのような多項式 g(x)h(x)g(x) が次数最低であるように選んだとしよう。 f(x)g(x)h(x) の因数であるから
k(x)f(x)=g(x)h(x)
のような多項式 k(x) が存在する。除法のアルゴリズムによって
f(x)=q(x)g(x)+r(x)
と表わされ、r(x) の次数は g(x) の次数より小である。ここで f(x) は既約であるから r(x)0 でなければならない。この等式に h(x) をかけて変形すれば、次式が得られる。
r(x)h(x)=f(x)h(x)q(x)g(x)h(x) =f(x)h(x)q(x)k(x)f(x)
よって r(x)h(x)f(x) で割りきれなければならない。ところが r(x) の次数は g(x) の次数よりも小さいので、これはわれわれの g(x) のとり方に矛盾する。
(証明終り)
2つの多項式を g(x),h(x) として、それらの積 g(x)h(x)f(x) で割り切れるものと仮定して進めています。g(x),h(x) は0ではなく、次数が n より小さいもので、 g(x) の次数が最低であるとします。g(x)h(x)f(x) で割りきれるので、
k(x)f(x)=g(x)h(x)
と式を立てることができます。

また、f(x)g(x) で割ったときの商を q(x) 、余りを r(x) として、f(x) は次のように表わされます。
f(x)=q(x)g(x)+r(x)
r(x) は余りですので、r(x) の次数は g(x) の次数より小さく、また、f(x) は既約多項式ですので、 r(x)0 です。f(x)=q(x)g(x)+r(x)h(x) をかけて変形します。
f(x)h(x)=q(x)g(x)h(x)+r(x)h(x)r(x)h(x)=f(x)h(x)q(x)g(x)h(x)r(x)h(x)=f(x)h(x)q(x)k(x)f(x)(k(x)f(x)=g(x)h(x)
右辺のどちらの項にも f(x) がありますので、r(x)h(x)f(x) で割りきれます。

ところで、最初に g(x)h(x)f(x) で割り切れると仮定した際、g(x) を次数最低のものとして仮定しました。ところが、 r(x)f(x)g(x) で割ったときの余りですので、r(x) の次数は g(x) の次数より小さいものです。その r(x)h(x) の積が f(x) で割りきれるということが起こってしまった、矛盾が生じたということになります。

『ガロア理論入門』は節の冒頭に訳者による概要がつけられています。その概要に「次の補題を証明する」と書かれたあと、この補題について以下のように記号で書かれていました。
deg g(x)<n, deg h(x)<n  f(x)g(x)h(x)
deg ってなんだ?  ってなんだ(読み方すらわからない)? という状態でしたが、補題の内容を確認することで、deg は「次数(degree)」、 は(読み方は未だわかりませんが)「割りきれない」ということがわかりました。ちなみに「割りきる」は「」を使うようです。

【参考】雑記帳「LaTeX での「割り切る」記号

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