2012/02/09

ガニェの9教授事象

『続ける技術』や『教える技術』の著者、石田淳さんが代表を務める(株)ウィルPMインターナショナルのFacebookページで、「ガニェの9教授事象」というものを知りました。

人が何かを学習するとき、そこには「外からの情報を受け取り、それをしっかりと記憶するまで」のプロセスがあります。
「ならば、その“学習プロセス”の順番にそって最適な『指導』を行い、学習の効果を最大に高めよう」というコンセプトにもとづき、ガニェは9つの「教授事象」を定めました。

ガニェというのは、教育心理学者のロバート・ガニェ博士のこと。

学習効果を高めるため、教える側・指導する側の9つのプロセスが「ガニェの9教授事象」です。

9つの教授事象とは、
  1. 学習者の注意を喚起する
  2. 学習者に目標を知らせる
  3. 前提条件を思い出させる
  4. 新しい事項を提示する
  5. 学習の指針を与える
  6. 練習の機会をつくる
  7. フィードバックを与える
  8. 学習の成果を評価する
  9. 保持と転移を高める

WILL PMのFacebookページでは、先日より数日にわたって「ガニェの9教授事象」の紹介がなされていました。
『ガニェの9教授事象』は、専門用語が多く、その内容は少々難解です。
そこで、専門用語を身近な言葉に置き換え、部下の育成に生かすためのアレンジを加えながら、9つの「教授事象」を「指導メニュー」としてわかりやすく紹介してきます。

その説明がわかりやすかったのですが、Facebookページで少しずつ紹介されていたために、後で読み返しにくい。

そこで、まとめておこうと思った次第です。

引用をもとに、空間的な移動に例えつつ、まとめていきます。




1. 学習者の注意を喚起する

これは、簡単に言うと「指導に注目させる」ということ。

ただし、ここで目指しているのは、単に“気持ち”を集中させることではありません。

耳や目といった感覚器官が、情報を確実に受け取るように準備させる、というのがいちばんの狙いです。

たとえば、たくさんの人を集めて講義やプレゼンテーションを行うときには、「アニメーションやビデオを用いる」「いきなり実演を行う」など、ものめずらしさを利用すると効果的。

一方、マンツーマンで部下を指導する場合は、「これから指導する内容にまつわる、おもしろいエピソードを話す」「その日の指導内容に関わる、ちょっと突飛で鋭い質問を投げかかる」といった方法で、部下の興味や好奇心を引き出すと効果大なのです。

マーケティング用語で、「AIDMA(アイドマ)」というものがあります。

「AIDMA」とは、消費行動のプロセスの頭文字を取ったもので、消費者がある商品を知って購入に至るまでには、Attention(注意)→Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)というプロセスがあるというものです。

購買意欲を高めるためにも、学習意欲を高めるためにも、まずは注意喚起が必要です。

空間的な移動に例えるなら、「行ってみたい」と思ってもらうこと。

学習者の立場から言えば、「行きたい」と思うこと。

まずはこれが第一ステップです。


2. 学習者に目標を知らせる

これは、簡単に言うと「指導の目標を伝える」ということです。

実施する指導によって、どんな知識や技術が身につくかを、最初の段階で部下に伝えます。

指導の目標を知らせることは、指導を受け入れる人の意欲を高め、学習に集中させるのに役立ちます。

スポーツ教室にたとえるなら、「今日のレッスンで、こんなプレーができるようになりますよ」と、先生が模範プレーを披露するようなものです。

「技術」を教えるための指導では特に、このように“期待される成果”を実演して見せることで、部下の“学ぶ意欲”を高めることができます。

「知識」を教える場合は、目標を明確な言葉で表現しておくことで、指導が横道にそれるのを防ぐという効果もあります。

目的地があることで、様々なルートを考えることができます。

ここは、「目標設定」や「ゴールセッティング」とも言えます。

ただぶらぶらと歩きまわる、探し回るよりは、早く目的地にたどり着くことができます。


3. 前提条件を思い出させる

これは、簡単に言い換えると「必要な知識を思い出させる」ということ。

新しいことを学ぶためには、その土台となる「知っていなければならないこと」がいろいろあります。

たとえば、部下に見積書の書き方を教える場合なら、ビジネス文書の基本や見積書の役割といった「すでに知っている関連事項」がいくつかあります。

こうした過去に身につけた“知識”は、普段「長期記憶」という場所にしまい込まれています。

そこで、しまい込まれている“必要な知識”を引っ張り出して、自在に使いこなせる状態にする、というのがこの指導メニュー。

何回かに分けて行う勉強会なら、前回学んだことを振り返るというプロセスもこの指導メニューに相当します。

「2. 学習者に目標を知らせる」の目的地の例で言うならば、現在地を確認する、ということ。

現在地と目的地があって初めてルート検索ができ、最短ルートを考えることができます。


4. 新しい事項を提示する

これは、簡単に言い換えると「新しいことを教える」ということ。

これまで、
1.指導に注目させる

2.指導の目標を伝える

3. 必要な知識を思い出させる
と進んできましたが、ようやくここで、教えたい知識・情報・ルールなどを部下に伝えていきます。

人は情報を取り入れると、最初に「短期記憶」という場所に格納します。

ところが、「短期記憶」は格納できる情報の量に限りがあるため、このプロセスで「選択的知覚」=“人は自分に有利な情報や、必要性の高い情報だけを選択的に取り入れる(それ以外は無視する)”というものが働きます。

ですから、何かを確実に教えたいなら、最も重要なポイントをはっきりと際立たせる工夫が必要なのです!

たとえば、プリントでは主要な概念を太字や下線で目立たせたり、口頭で説明する場合は、声の質・大きさ・抑揚などでポイントを強調するといった具合です。

すると、それを受け取った部下の“脳”は、「なるほど、これが自分にとって必要な情報なんだな」と感知し、それを優先的に「短期記憶」に送り込むことになるのです。

ここも「目標設定」に含まれるかもしれませんが、途中のマイルストンの設定、あるいは乗換駅の確認ともいえるところ。

電車で出かけるとき、出発駅・到着駅・乗換駅は覚えたり、メモしたりするでしょう。

しかし、途中の通過する駅のひとつひとつを覚えたり、メモしたりすることはあまりしません。


5. 学習の指針を与える

これは、簡単に言い換えると「いろんな表現で何度も教える」ということ。

前回の指導メニュー4でお伝えした“新しいことを教える”。この段階で、部下の“脳”の中では次の2つのことが行われます。

○「短期記憶」の中に情報をキープしておく
○その情報を「短期記憶」から「長期記憶」へ移す

まずは前者についてお話しすると、実は、短期記憶に蓄えられた情報は、そのままにしておくと20秒以内に消失してしまいます。

どこかに電話をかけるとき、忘れないように電話番号を何度も口にしながらダイアルした経験はありませんか?

このような行動は、「短期記憶の中に情報をキープしておくこと」を支援しますが、ダイアルを終えたら、電話番号は短期記憶から消えてしまいます。

そこで重要になるのが、後者の「情報を短期記憶から長期記憶へ移す」というプロセス。

情報を長期記憶に受け入れさせ、その記憶を長く保つためには、情報に“意味”を与えることが重要なのです。

「応用例を出す」「新しく教えたことと、部下がすでに知っていることを関連づける」「新しく教えたことについてディスカッションする」など、さまざまな方法によって、新しく教えた情報の“意味”をどんどん強固にしていくのです。

これにより、新しく教えたことを確実に長期記憶に送り込み、長期間キープさせることが可能になります。

最初は「この駅で降りて、ここで乗り換えて…」と確認しながら出かけますが、電車通勤で何回も乗ったり降りたりしていると、次第に意識しなくなります。

初めて行く場所を歩くときは、「あのコンビニの角を曲がって…」と歩いていますが、何度も通る道だと自然に足が動いたりします。


6. 練習の機会をつくる

これは、簡単に言い換えると「部下自身に練習させる」ということ。

実際に部下にやらせることで、これまで教えたことを正しく、充分に「理解」しているかどうかを確認するのです。

決して、部下を「評価」することが目的ではありません。

部下が練習しているところを注意深く観察し、不確かなところがないか? 誤解しているところがないか?などをチェックします。

「技術」を教えるとき、この“練習”というプロセスが省かれることはめったにありません。

一方「知識」の指導では、“教える側”からの一方的な指導が中心となり、“練習”を行う機会が与えられないことがよくあります。

しかし、「知識」に関しても、“練習”は絶対に必要。

「口頭で質問に答えさせる」
「小テストを実施する」
「○×クイズを出す」

など、内容に合わせて形式を選択してください。

私は、誰かと一緒に歩いた道はなかなか覚えられません。

1人で実際に歩いてみなければ、覚えられないのです(^-^;)

初めて行く場所は、「行き」と「帰り」で風景が違っているので注意しながら歩きますが、慣れてくると、「あの道をまっすぐ行ったらもっと近いかも」などと試したりもします。


7. フィードバックを与える

これは、簡単に言い換えると「練習の結果をフィードバックする」ということ。

これは、「きちんと理解できているのか?」「間違いがあるなら、それはどこなのか?」といったことを部下本人が確認できるような情報を与えるといったことです。

「知識」のインストラクションであれば、部下の解答が「正解か不正解か」をまず伝えます。

そして不正解の場合は誤解や抜け落ちを修正するための指示を与えます。

「技術」を指導している場合のフィードバックは、「いいね!」「ここはもっとこうすれば、よくなるよ!」といった言葉かけや、うなずき、笑顔などさまざまな方法が考えられます。

部下にはっきり伝わることが重要なので、曖昧な表現にならないように気をつけましょう。

新しい経路を試してみると、以前の経路よりも早く着いた、あるいは、安く行けた、など数値に置き換えることができれば確認することができます。

フィードバックとは、もともと軍事用語で、ミサイルの着弾点と目標点の差異を伝えることだったらしいです。


8. 学習の成果を評価する

これは、簡単に言い換えると「指導の成果をチェックする(事後テストを実施)」ということ。

「事後テスト」を実施し、部下が身につけるべきことを確実に身につけたかを確認します。

そして正確に理解するまで教えます。間隔をあけて何度もテストをするのがベストです。

これは、一人でいけるかどうか、ですね。

「はじめてのおつかい」を思い出します。


9. 保持と転移を高める

これは、簡単に言い換えると「反復練習を繰り返す」ということです。

ここでのポイントは2つ。

■身につけた知識や技術を、ずっと覚えておくこと

■知識や技術を、さまざまな状況で使いこなせること

そのためには、適当な間隔をあけた反復練習が効果的です。毎回、違う応用問題や新しい課題を用意しましょう。

このような反復練習により、「知識」や「技術」が部下の中に根づき、それをさまざまな状況で使いこなせるようになるのです。

切符の買い方や電車の乗り方を覚えたり、地図の読み方を覚えたりしていると、初めて向かう目的地でも一人で行くことができます。

学んだことが応用することで、様々なことができるようになっていきます。



思いつくままに書いたので、まとまりがない部分もあるかもしれませんがご容赦ください。


「教える」という行為を「望ましい行動を引き出す」行為と捉え、その行動をどのように引き出し、強化していくか、を行動科学マネジメントの観点から説いた本。

当たり前のことではあるが、できていないことが多々あることに気付かされる。

特に「おつかい」の例はわかりやすい。

タイトルは「教える技術」だが、知識・スキルを伝えるだけではなく、行動を引き出すまでを「教える」としたことで、コーチング的観点も含まれている。