2019/12/08

第2章第2節の節末問題(問題2-7、2-8解答)

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第2節の節末問題、問題2-7です。
問題2-7 \( p \) は素数、\( a_0, a_1, \cdots, a_n \) は整数で、
(1) \( \ p \nmid a_n \quad \)
(2) \( \ p \mid a_i ( i = 0, 1, 2, \cdots, n-1 ) \quad \)
(3) \( \ p^2 \nmid a_0 \)
のとき \( f(x) = a_0 + a_1 x + \cdots + a_n x^n \) は有理数体 \( Q \) 上既約であることを示せ。
早速、本の解答をみてみましょう(早速かい!!)
解答
\( f(x) \) が \( Q \) 上可約ならば、整数を係数とする、次数が \( n-1 \) 以下の \( g(x), h(x) \) の積に分解される。
\( g(x) = b_0 + b_1 x + \cdots + b_{n-1} x^{n-1} \),
\( h(x) = c_0 + c_1 x + \cdots + c_{n-1} x^{n-1} \)
とする。ここで係数の中には0のものがあってもよい。\( f(x) = g(x) h(x) \) の係数をくらべて \( a_0 = b_0 c_0 \) かつ \( p \mid a_0 , \ \ p^2 \nmid a_0 \) だから、たとえば \( p \mid b_0 , \ \ p \nmid c_0 \)となる。これと \( a_1 = c_0 b_1 + c_1 b_0 \) かつ \( p \mid a_1 \) から \( p \mid c_0 b_1 \)、したがって \( p \mid b_1 \) となる。

次に \( a_2 = c_0 b_2 + c_1 b_1 + c_2 b_0 \) と \( p \mid a_2 \) から \( p \mid b_2 \) となり、これをつづけて \( p \mid b_i \ (i= 0, 1, \cdots, n-1 ) \) となり、\( g(x) \) の係数はすべて \( p \) で割りきれてしまい、したがって \( p \mid a_n \) となって仮定に反する。
記号が多いですが、しっかりと読めば証明の内容は理解することができます(証明の方法を思いつくことはまだ難しいですが……)。ここでも背理法が使われていますね。

\( f(x) \) が \( Q \) 上可約であると仮定して、可約であれば、整数を係数とする、次数が \( n-1 \) 以下の \( g(x), h(x) \) の積に分解されることから論を進めています。 \( g(x), h(x) \) を式で表わし、\( f(x) = g(x) h(x) \) の係数をくらべ、矛盾を導いています。

証明自体は理解できましたが、「\( p \) は素数、\( a_0, a_1, \cdots, a_n \) は整数で、\( \ p \nmid a_n \quad \), \( \ p \mid a_i ( i = 0, 1, 2, \cdots, n-1 ) \quad \), \( \ p^2 \nmid a_0 \)のとき \( f(x) = a_0 + a_1 x + \cdots + a_n x^n \) は有理数体 \( Q \) 上既約である」とは具体的にどういうことでしょうか。それを確認するために、問題2-8をみてみましょう。
問題2-8 前問を用いて、次の多項式は有理数体上既約であることを示せ。
(1) \( x^3 -3 \)
(2) \( x^4 -8x^2 +2 \)
(3) \( x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 \)
問題2-8は、問題2-7の内容を用いて、多項式が有理数体上既約であることを示す問題です。(1) から見ていきましょう。

\( x^3 -3 \) は、問題2-7での記号に当てはめると、\( a_0 = -3 , a_1 = 0 , a_2 = 0 , a_3 = 1 \) です。\( a_3 \) つまり1の約数ではなく、他の係数( \( a_0 = -3 , a_1 = 0 , a_2 = 0 \) ) の約数で、かつ、\( p^2 \) が \( a_0 \) の約数ではないような素数 \( p \) として、\( p = 3 \) があります。\( \ 3 \nmid 1 \) で、\( 3 \mid -3(= a_0 ), 3 \mid 0 ( = a_1, a_2 ) \) そして \( \ 3^2 \nmid -3 \) なので、\( x^3 -3 \)は有理数体上で既約であるといえます。

有理数体上で既約であるかどうかの判定に、問題2-7で示したことが使えるということですね。

続いて(2) を見ると、最高次の方から係数を列挙すると、1, 0, -8, 0, 2 となります。最高次の係数である1以外の数( 0, -8, 2 ) に共通の約数で素数のものとして、2があります。最高次の係数である1を割りきることはできませんし、定数項の2の約数に \( 2^2 \) はありません。(2)では、\( p= 2 \) が条件にあてはまり、
\( x^4 -8x^2 +2 \) は有理数体上で既約であるといえます。

では、(3) \( x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 \) はどうでしょうか。

係数はすべて1ですので、条件にあう素数は見つかりません。だから可約、というわけではないことに注意ですね。この多項式は円分多項式と呼ばれているもののひとつで、有理数体上で既約であることは有名です(円分多項式については『ガロア理論入門』でも後ででてくるので、詳しくはそちらで)。

(3) が既約であることについては、『ガロア理論入門』の解答では以下のようにしていました。
\( f(x) = x^4 + x^3 + x^2 + x + 1 = \frac { x^5 - 1 }{ x -1 } \) に対して \( g(y) = f(y+1) \) とおくと
\( g(y) = \frac { ( y + 1 )^5 - 1 }{ ( y+1 ) -1 } = y^4 + 5 y^3 + 10 y^2 + 10 y + 5 \)
であるから、前問により \( g(y) \) は既約、ところがもし \( f(x) = h(x) k(x) \) ならば \( g(y) = h(y+1)k(y+1) \) となって \( g(y) \) が可約となってしまうので、\( f(x) \) も既約である。
\( g(y) = y^4 + 5 y^3 + 10 y^2 + 10 y + 5 \) については、\( p = 5 \) のときに問題2-7の条件にあてはまり、\( g(y) \) は既約となります。もし \( f(x) \) が可約であれば、\( g(y) \) が可約になってしまい矛盾する、だから \( f(x) \) は既約であるという背理法です。

なぜこのような一手間をかけなければならないのかは、おそらく円分多項式だからということなのでしょうが、僕は詳しくはわかっておりません。今後、円分多項式が出てきたときに再考してみたいと思います。


この記事には関係ないですが、ブロクのCSSに囲み枠を追加してみました。以下のように書くと、なんとなく様になった気がします。
有理数体上の既約多項式
\( p \) は素数、\( a_0, a_1, \cdots, a_n \) は整数で、
  • \( p \nmid a_n \)
  • \( p \mid a_i \quad ( i = 0, 1, 2, \cdots, n-1 ) \) 
  • \( p^2 \nmid a_0 \)
のとき、 \( f(x) = a_0 + a_1 x + \cdots + a_n x^n \) は有理数体上既約である。
CSSの追加について、以下の記事を参考にしました。
サルワカ「【CSS】おしゃれなボックスデザイン(囲み枠)のサンプル30

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