まずは第1節「拡大体」について、用語の定義、説明から入ります。以下で扱う体は可換体であると仮定されています。
EE を体とする。EE の部分集合 KK が EE で定義された加法、乗法で体をなすとき、KK を EE の部分体といい、EE を KK の拡大体という。EE が KK の拡大体であるということを、K⊂EK⊂E で表わす。集合に部分集合があるように、体にも部分体があります。部分集合と比べて注意しなければならないことは、部分集合では集合のなかの任意の要素で部分集合をつくることができますが、部分体の場合は体をなさなければならないということです。体の定義はここには載せませんが、体の適当な部分をとって部分体とすることはできないということには注意が必要です。
部分集合と書き方は同じですが、EE が KK の拡大体であるということを、K⊂EK⊂E と書きます。一応、それっぽくまとめておきます。
部分体・拡大体
体 EE の部分集合 KK が EE で定義された加法、乗法で体をなすとき、KK を EE の部分体といい、EE を KK の拡大体という。
K⊂EK⊂E EE は KK の拡大体である
では、次に進みます。
α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ を EE の要素とするとき、KK の要素を係数にもつ α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ の多項式の商として表わされる EE の要素の集合を K(α,β,γ,⋯)K(α,β,γ,⋯) と書く。明らかに K(α,β,γ,⋯)K(α,β,γ,⋯) は α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ を含む KK の拡大体のうちの最小のものである。 K(α,β,γ,⋯)K(α,β,γ,⋯) を、KK に要素 α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ を付加して得られる体、あるいは KK 上 α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ によって生成される体という。言い回しが難しいので、簡単な例を挙げてみます。体 KK を有理数体として考えます。有理数体は QQ と書かれることが多いので、以下 QQ と書きます。また、 EE を実数体 RR とします。
√2√2 というのは、有理数ではないので QQ の要素ではありません。 √2√2 は RR の要素です。このとき、 QQ の要素を係数にもつ √2√2 の多項式の商として表わされる RR の要素の集合を Q(√2)Q(√2) と書こうといっています。「KK の要素を係数にもつ α,β,γ,⋯α,β,γ,⋯ の多項式の商として表わされる EE の要素の集合」という言い回しが少しわかりにくいですが、いまの例でいうと、 p,qp,q を有理数として、p+q√2p+q√2 で表わされる全体の集合のことです。それを QQ に要素 √2√2 を付加して得られる体、あるいは QQ 上 √2√2 によって生成される体と呼び、 Q(√2)Q(√2) と書こう、といっています。有理数と √2√2 でつくられる数の集合が Q(√2)Q(√2) です。そして Q(√2) は、√2 を要素とする Q の拡大体のうちで最小のものとなります。
結城浩『数学ガール/ガロア理論』のなかでは、添加という語が使われていました。添加体とも呼ばれていたので、ここでは添加体としてまとめておきます。
添加体
α,β,γ,⋯ を E の要素とするとき、K の要素を係数にもつ α,β,γ,⋯ の多項式の商として表わされる E の要素の集合を、K に α,β,γ,⋯ を添加した体という。
K(α,β,γ,⋯) K に α,β,γ,⋯ を添加した体
続いて、拡大体をベクトル空間と見なし、次元により拡大体の次数を定義します。
K⊂E のとき E は K 上のベクトル空間とみることができる。この場合、ベクトル空間としての演算は、 E の中で定義されている加法および K の要素との積を考えるのである。K 上のベクトル空間 E の次元を E の K 上の次数といい、(E/K) で表わす。(E/K) が有限のとき、 E は K の有限次拡大体であるという。『ガロア理論入門』の第1章は「線形代数」でした。線型空間(ベクトル空間)のいわば大きさを表わす次元を、拡大体の大きさを表わすことにも使っていこうということです。
拡大体の次数
K 上のベクトル空間 E の次元を E の K 上の次数といい、(E/K) で表わす。
(E/K) E の K 上の次数
とくに (E/K) が有限のとき、 E は K の有限次拡大体であるという。
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