2019/11/12

ベクトル空間の問題

エミール・アルティン『ガロア理論入門』の第1章第2節の問題。
問題2-1 体K 上のベクトル空間V において
(1) a00、(-1)a=-a を証明せよ。
(2) aa0 ならば a=0 または a0 であることを証明せよ。
ベクトル空間(左ベクトル空間)の定義は以下。
V を加群とし、その要素を a, b, で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。
  1.  a(ab)=aa+ab
  2.  (a+b)a=aa+ba
  3.  a(ba)=(ab)a
  4.  1aa
前回、0a0 の証明があったので、それも見ておく。
aa=(a+0)a=aa+0a
∴0a0

まずは問題2-1の(1) a00 について。僕の解答。
aa=a(a+0)=aa+a0
∴a00
本での解答は以下。
a0=a(0+0)=a0+a0 から a00
これはOKだろう。

続いて、(-1)a=-a について。少し工夫が必要そうだ。文字式に慣れていると当たり前のことのように思うが、ここでわかっていることは、空間ベクトルの定義(公理)だけである。それとこれまでに証明した 0a0、a00 は使える。

(-1)a=-a の左辺 (-1)a は、V の要素 aa として定義されているかたちだ。では、右辺の -a はどうだろう。難しく考えすぎだろうか。本の解答を見る。
a+(-1)a={1+(-1)}a=0a0 から (-1)a=-a
なるほど、a の属する V は加群、つまり、加算に関する可換群なので、a の逆元 -a が存在することを利用したのだろう。

次は問題2-1の(2)、aa0 ならば a=0 または a0 であることの証明。a=0 ならば 0a0、そして、a0 ならば a00 はここまでに証明したことにある。今回はその逆の証明だ。さて、どうする。

思いつかず、解答を見る。
aa0 で a≠0 とすると、K の中に a-1 が存在する。
a-1(aa)=(a-1a)a=1aa,  a-100
から a0 となる。
なるほど、今度は K の中に、乗算に関して0以外の要素に逆元a-1 が存在することを利用したのか。

普段(とはいってもほとんどない、が)は文字式の計算を何気なくしているが、当たり前にしていることを証明するのはなかなか難しい。

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