2019/12/19

ビリヤードの問題再考(8)

森博嗣さんの『笑わない数学者』の中でのビリヤード玉の問題についてあらためて考えています。
五つのビリヤードの玉を、真珠のネックレスのように、リングでつなげてみるとしよう。玉には、それぞれナンバが書かれている。さて、この五つの玉のうち、幾つ取っても良いが、隣どうし連続したものしか取れないとしよう。一つでも、二つでも、五つ全部でも良い。しかし、離れているものは取れない。この条件で取った玉のナンバを足し合わせて、1から21までのすべての数ができるようにしたい。さあ、どのナンバの玉を、どのように並べて、ネックレスを作れば良いかな?
5つのビリヤード玉 \( a_1, a_2, a_3, a_4, a_5 \) が、右回りでこの順につながっているとして、\( a_1 = 1 \) としたとき、21通りの取り出し方にどこまで大小関係がつけられるのかを考えています。前回は以下まで確認しました。
$$
\begin{eqnarray}
[ A_2 B_1 ] & \lt & C_5 & \lt & D_5 \\
[ A_2 B_1 ] & \lt & [ B_2 C_1 ] & \lt & D_5 \\
A_3 & \lt & [ B_2 C_1 ] & \lt & [ C_2 D_1 ] \\
A_3 & \lt & B_3 & \lt & [ C_2 D_1 ] \\
A_4 & \lt & B_3 & \lt & [ C_3 D_3 ] \\
A_4 & \lt & [ B_4 C_4 ] & \lt & [ C_3 D_3 ] \\
[ A_5 B_5 ] & \lt & [ B_4 C_4 ] & \lt & D_4 \\
[ A_5 B_5 ] & \lt & C_5 & \lt & D_4
\end{eqnarray}
$$
上の不等式について、一応きれいにそろえるように書きましたが、もう少しわかりやすくならないでしょうか。

\( A_1 \) とか \( A_2 \) というような記号は、表記を短くするだけのために使っているのですが、もともとは、\( a_1, a_2, a_3, a_4, a_5 \) の組み合わせでつくったものです。いま \( a_1 = 1 \) として考えているので、\( a_1 = 1 \) を代入したそれぞれの記号は以下です。
$$
\begin{eqnarray}
A_1 &=& 1 \\
A_2 &=& a_2 \\
A_3 &=& a_3 \\
A_4 &=& a_4 \\
A_5 &=& a_5 \\\\

B_1 &=& 1 + a_2 \\
B_2 &=& a_2 + a_3 \\
B_3 &=& a_3 + a_4 \\
B_4 &=& a_4 + a_5 \\
B_5 &=& a_5 + 1 \\\\

C_1 &=& 1 + a_2 + a_3 \\
C_2 &=& a_2 + a_3 + a_4 \\
C_3 &=& a_3 + a_4 + a_5 \\
C_4 &=& a_4 + a_5 + 1 \\
C_5 &=& a_5 + 1 + a_2 \\\\

D_1 &=& 1 + a_2 + a_3 + a_4\\
D_2 &=& 20 \\
D_3 &=& a_3 + a_4 + a_5 + 1 \\
D_4 &=& a_4 + a_5 + 1 + a_2 \\
D_5 &=& a_5 + 1 + a_2 + a_3 \\\\

E &=& 21
\end{eqnarray}
$$
今度は、\( a_1, a_2, a_3, a_4, a_5 \) の大小関係が、どのように各要素に影響しているのかを見てみます。たとえば、\( a_1 \lt a_2 \lt a_3 \lt a_4 \lt a_5 \) だったならば、\( B_1 , B_2 , B_3 , B_4 , B_5 \) の大小関係はどうなるのか、ということです。

\( a_1 = 1 \) としているので、残りの \( a_2, a_3, a_4, a_5 \) の大小関係を仮定してすすめていこうと思いますが、4個の順列すべてを確認するのはさすがに骨が折れます( \( 4! = 24 \) 通りあります)。なのでここでは、\( a_1 \lt a_2 \lt a_3 \lt a_4 \lt a_5 \) のときと、5つのビリヤード玉での解( \( 1, 5, 2, 10, 3 \) )のとき、つまり \( a_1 \lt a_3 \lt a_5 \lt a_2 \lt a_4 \) のときにとどめたいと思います。

まずは、\( a_1 \lt a_2 \lt a_3 \lt a_4 \lt a_5 \) のとき。

\( B_1 \) と \( B_2 \) では、\( a_2 \) が共通しているので、\( 1 \) と \( a_3 \) の大小関係が \( B_1 \) と \( B_2 \) の大小関係となり、\( B_1 \lt B_2 \) です。このように続けると、\( B_2 \lt B_3 \)、\( B_3 \lt B_4 \)、\( B_5 \lt B_4 \) がわかります。ひとまずまとめた不等式を書くと、\( B_1 \lt B_2 \lt B_3 \lt B_4, \ B_5 \lt B_4 \) です。さて、\( B_5 \) がどこに入るかですが、\( B_1 \lt B_5 \) はわかりますがパッと見ではわかりません。ひとまず現在の状況でまとめておきます。
$$
\begin{array}{ccccc}
B_1 & \lt & B_2 \lt B_3 & \lt & B_4 \\
B_1 & \lt & B_5 & \lt & B_4
\end{array}
$$
同様に \( C_1 \) から \( C_5 \) を見ると、
$$
\begin{array}{ccccc}
C_1 & \lt & C_2 & \lt & C_3 \\
C_1 & \lt & C_5 \lt C_4 & \lt & C_3
\end{array}
$$
\( D_1 \) から \( D_5 \) では、
$$
\begin{eqnarray}
D_1 \lt D_5 \lt D_4 \lt D_3 \lt D_2
\end{eqnarray}
$$
です。

\( D \) 系列(と勝手に呼びますが)は、\( A \) 系列のいわば逆の関係です。\( a_1, a_2, a_3, a_4, a_5 \) で\( A \) 系列、つまり1個の要素を取るということは、4個の要素を残すことになります。逆も然りです。いま\( A \) 系列の大小関係を決定させているので、\( D \) 系列の大小関係も決定しています。一方、\( B \) 系列と\( C \) 系列は(これも逆の関係です)、大小関係が決定しておりません(決定できるのに、僕が決定させられていないだけかもしれませんが……)。

では、\( a_1 \lt a_3 \lt a_5 \lt a_2 \lt a_4 \) のときはどうでしょうか。

まずは \( B \) 系列をみてみます。
$$
\begin{eqnarray}
B_5 \lt B_1 \lt B_2 \lt B_3 \lt B_4
\end{eqnarray}
$$
続いて \( C \) 系列。
$$
\begin{eqnarray}
C_1 \lt C_5 \lt C_4 \lt C_3 \lt C_2
\end{eqnarray}
$$
\( D \) 系列。
$$
\begin{eqnarray}
D_5 \lt D_3 \lt D_1 \lt D_4 \lt D_2
\end{eqnarray}
$$
となりました。

\( a_1 \lt a_3 \lt a_5 \lt a_2 \lt a_4 \) のときというのは解答のときなので、決定しても不思議ではないのですが、このメカニズムというか、本質というか、それが僕にはまだわかっていないようです。

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