西田幾多郎『善の研究』を読んでいると以下の一節に出会った。
ハイネが静夜の星を仰いで蒼空における金の鋲といったが、天文学者はこれを詩人の囈語として一笑に附するのであろうが、星の真相はかえってこの一句の中に現われて居るかも知れない。注解がついており、ドイツの作家であるハインリヒ・ハイネ(Heinrich Heine, 1797-1856)が、その詩集『北海』に収められた詩「夜の船室にて」の一節を踏まえたものであろう、と書かれていた。
天上の星は固く留められている
金の鋲によって
憧れも、嘆息もむなしい
寝入ることこそ最善なり
現在の天文学的知識からいうと、夜空に見える星々は、たとえ隣り合っているように見えても実際には隣り合っておらず、何光年も離れていることになる。たまたま地球という惑星から見ると隣り合って見えるだけである。
宇宙ロケットの開発などは、現在の天文学・物理学などの科学知識を基になされていて、小惑星探査機「はやぶさ」などの活躍を見ると、これらの知見は誤ってはいないだろう。これからどのような発見があるのかということも気になるし、楽しみでもある。このような宇宙開発や研究調査にかかわっていれば現実味も増すだろう。
かかわりがないとは言わないが、薄い。どちらかといえば、金の鋲によって留められている星々の方が実感が湧く。科学的想像力の欠如と言われたらそうなのかもしれないが、天上に金の鋲で留められているという想像力も素敵なことだと思う。
昔に比べて、見える星の数が減ったように思う。数えたことはないので印象だけなのかもしれない。大気汚染のためなのかもしれないし、目が悪くなったからかもしれないし、曇り空の日が多いだけなのかもしれない。
あるいは、金の鋲が取れてしまったのかもしれない。再度、金の鋲で留めるすべを、まだ知らない。
憧れも、嘆息もむなしい。寝入ることこそ最善なり。
天上の星を留めたる金の鋲
ハイネも独り眠りにつける
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