1変数の3次方程式は一般的に次のように書ける。
ay3+by2+cy+d=0(a≠0)ay3+by2+cy+d=0(a≠0)
これに、y=x−b3ay=x−b3a を代入して整理すると、a(x−b3a)3+b(x−b3a)2+c(x−b3a)+d=0x3−b2−3ac3a2x+2b2−9abc+27a2d27a3=0a(x−b3a)3+b(x−b3a)2+c(x−b3a)+d=0x3−b2−3ac3a2x+2b2−9abc+27a2d27a3=0
p=−b2−3ac3a2, q=2b2−9abc+27a2d27a3p=−b2−3ac3a2, q=2b2−9abc+27a2d27a3 とおくと、x3+px+q=0x3+px+q=0
と表せる。こちらの3次方程式は変数の2次の項がない。y=x−b3ay=x−b3a と p=−b2−3ac3a2, q=2b2−9abc+27a2d27a3p=−b2−3ac3a2, q=2b2−9abc+27a2d27a3 から、x3+px+q=0x3+px+q=0 を ay3+by2+cy+d=0ay3+by2+cy+d=0 に戻すことができるので、3次方程式を考える場合には、x3+px+q=0x3+px+q=0 を一般形として考えることが多い。
この変換を『数学ガール/ガロア理論』ではチルンハウス変換と呼んでいたが、別の本やWeb記事などでは「フェラーリの方法」とか「立法完成」とも呼ばれていた。
さて、このチルンハウス変換は3次方程式だけではなく、他の次数の方程式でも使えるのだろうか。
たとえば2次方程式で考えてみる。
3次方程式で y=x−b3ay=x−b3a としたならば、2次方程式では y=x−b2ay=x−b2a がよさそうである。2次方程式の一般形を
ay2+by+c=0(a≠0)ay2+by+c=0(a≠0)
として、y=x−b2ay=x−b2a を代入して整理する。a(x−b2a)2+b(x−b2a)+c=0a(x2−bax+b24a2)+bx−b22ax+c=0ax2+−b2+4ac4a=0x2+−b2+4ac4a2=0a(x−b2a)2+b(x−b2a)+c=0a(x2−bax+b24a2)+bx−b22ax+c=0ax2+−b2+4ac4a=0x2+−b2+4ac4a2=0
1次の項が消えた。そして、馴染みのあるかたちが出てきた。ちょっと逸れるが、このまま xx について解いてみる。x2+−b2+4ac4a2=0x2=b2−4ac4a2x=±√b2−4ac4a2x=±√b2−4ac2ax2+−b2+4ac4a2=0x2=b2−4ac4a2x=±√b2−4ac4a2x=±√b2−4ac2a
y=x−b2a からy=±√b2−4ac2a−b2ay=−b±√b2−4ac2a
と、2次方程式 ay2+by+c=0 の解の公式が出てきた。2次方程式の解の公式を導出する際、普通はチルンハウス変換のような変数変換は行なわない。「平方完成」という操作をする。(「2次方程式の解の導出」参照)。
とすると、3次方程式でもチルンハウス変換ではなく、2次方程式の平方完成に相当するような「立法完成」をやってみてはどうだろうか(計算は面倒くさそうだが)。
とりあえずやってみる。3次方程式を ax3+bx2+cx+d=0 (a≠0) として、両辺を a で割った x3+bax2+cax+da=0 から計算してみる。
(左辺)=x3+bax2+cax+da=(x+b3a)3−bax2−b23a2x−b327a3+bax2+cax+da=(x+b3a)3−b23a2x+cax−b327a3+da=(x+b3a)3−b2−3ac3a2x−b3−27a2d27a3
2次の項は消え、x3+px+q=0 という形式にはなる。が、解の公式の導出がやりやすくなるというようなことはなかった。話を戻し、チルンハウス変換はどうやら最高次の次の項を消すような変換のことを指すようだ。4次のときにも y=x−b4a で変換すると3次の項が消える。確認は面倒なのでしない。Wikipediaで四次方程式の項を見ると、フェラーリの方法の一部として同様の変数変換が行なわれていた。フェラーリは4次方程式の解の公式を導いた人の名前である。チルンハウスも人名。
僕のなかで曖昧だった用語を次のように整理する。
チルンハウス変換:ここでみたような最高次の次の項を消すような変数変換(あるいは式変形)
平方完成:2次の場合のチルンハウス変換、主に式変形
立法完成:3次の場合のチルンハウス変換、主に式変形
フェラーリの方法:フェラーリの4次方程式の解の公式の導出方法
0 件のコメント:
コメントを投稿