2019/12/02

3次方程式の解の公式の導出(3)

3次方程式の解の公式の導出(1)
3次方程式の解の公式の導出(2)

前回は、カルダノの方法で3次方程式 \( x^3 + px + q = 0 \) の解の公式を求めました。

今回は、本質は同じこととですが、別の方法、ラグランジュ・リゾルベントを用いた方法を紹介します。

ラグランジュ・リゾルベントとは、数学者ラグランジュによる分解式(resolvent、リゾルベント)です。僕は、このラグランジュ・リゾルベントというものを、結城浩『数学ガール/ガロア理論』を読んで初めて知りました。これから書いていくことも『数学ガール/ガロア理論』でなされていたことですが、僕なりの理解したところとなるので言葉足らずなところがあるかもしれませんがご容赦ください。


カルダノのときと同じく、3次方程式 \( x^3 + px + q = 0 \) の解の公式を求めていきます。

3次方程式は、3つの解を持ちます(重解の場合もあり)。3次方程式 \( x^3 + px + q = 0 \) の3つの解を、\( \alpha , \beta , \gamma \)とすると、解と係数の関係より、
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
\alpha + \beta + \gamma = 0 \\
\alpha \beta + \beta \gamma + \gamma \alpha = p \\
\alpha \beta \gamma = -q
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
\tag{1}
$$
が成り立ちます。解と係数の関係は、\( ( x - \alpha )( x - \beta )( x - \gamma ) = 0 \) の左辺を展開して、 \( x^3 + px + q = 0 \) の係数と比較することで出てきます。

さて、ラグランジュ・リゾルベントです。次のように、\( L \) と \( R \) を定義します。
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
L = \omega \alpha + \omega ^2 \beta + \gamma \\
R = \omega ^2 \alpha + \omega \beta + \gamma
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
\tag{2}
$$
\( \omega \) は、1の原始3乗根の一つです。

解の公式の導出からちょっと話はそれますが、\( \omega \) について書いておきます。

1の3乗根というのは、3乗すると1となる数ですが、3つあります。3乗して1となる数を \( X \) とすると、 \( X^3 = 1 \) です。この方程式を解くと、
$$
\begin{align}
X^3 &= 1 \\
X^3 - 1 &= 0 \\
( X - 1 )( X^2 + X + 1 ) &= 0 \\
\therefore X &= 1, \frac{ -1 \pm \sqrt{3} i }{ 2 }
\end{align}
$$
2次方程式の解の公式を使うと \( X^2 + X + 1 = 0 \) の解を求めることができます。

1の原始3乗根というのは、3乗してはじめて1となる数です。1の3乗根は、\( 1, \frac{ -1 \pm \sqrt{3} i }{ 2 } \) の3つがありますが、このうち1は、3乗までしなくとも、1の2乗は1ですし、1の1乗は1となるので、1は1の原始3乗根ではありません。なので \( \omega \) は、\( \frac{ -1 + \sqrt{3} i }{ 2 } \) か \( \frac{ -1 - \sqrt{3} i }{ 2 } \) のどちらかとなりますが、ここではどちらを \( \omega \) としても構いません。 \( \frac{ -1 \pm \sqrt{3} i }{ 2 } \) にはおもしろい性質があって、片方を2乗するともう片方になるという性質があります。
$$
\left( \frac{ -1 + \sqrt{3} i }{ 2 } \right )^2 = \frac{ -1 - \sqrt{3} i }{ 2 } \\
\left( \frac{ -1 - \sqrt{3} i }{ 2 } \right )^2 = \frac{ -1 + \sqrt{3} i }{ 2 }
$$
つまり、1の3乗根の3つの数 \( 1, \frac{ -1 \pm \sqrt{3} i }{ 2 } \) は、\( \omega \) を使って表わすと、 \( 1, \omega , \omega ^2 \) となります。また、\( \omega \) は3乗すると1になるので \( \omega ^3 = 1 \) ですし、 \( X^2 + X + 1 = 0 \) の解でもあるので、\( \omega ^2 + \omega + 1 = 0 \) です。

3次方程式の解の公式の導出(4)へ続く)

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