2019/12/17

逆元の存在の確認

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第3節の続きです。

\( K \subset E \) で、体 \( K \) 上の代数的な \( E \) の要素 \( \alpha \) の最小多項式 \( f(x) \) の性質を確認し、要素 \( \theta \) のつくる \( E \) の部分集合 \( E_0 \) が体であり、\( K ( \alpha ) \) であることを示そうとしています。そのために、 まずは \( E_0 \) を模写した \( E_1 \) が体であることを示そうとしています。 \( E_1 \) は、体の公理のほとんどが満たされていて、残るは、乗法に関して、0以外のすべての要素について逆元が存在することを示すことです。
 ここで、 \( E_1 \) が体であることを示すために \( E_1 \) の2つの要素 \( g( \xi ) \neq 0 \) と \( h( \xi ) \) が与えられたとき
$$
g( \xi ) X( \xi ) = h( \xi )
$$
となるような \( E_1 \) の要素
$$
X( \xi ) = x_0 + x_1 \xi + \cdots + x_{n-1} \xi ^{n-1}
$$
が存在することを示さねばならない。
逆元とは、次のような要素です。
逆元の定義(逆元の公理)
\( a \) を集合 \( G \) の要素とし、\( e \) を単位元とする。\( a \) に対して、以下の式を満たす \(b \in G \) を、演算★に関する \( a \) の逆元と呼ぶ。
$$
a★b = b★a = e
$$
\( g( \xi ) X( \xi ) = h( \xi ) \) となるような \( X( \xi ) \) が存在することを示すことが、なぜ、乗法に関して0以外のすべての要素について逆元が存在することを示すことになるのか。

きちんとした証明になっているかどうかは少し怪しいですが、現時点での僕なりの理解を書いておきます。

もし \( X( \xi ) \) が存在するとすれば、\( X( \xi ) = g^{-1}( \xi ) h( \xi ) \) となるはずです。
$$
g( \xi ) X( \xi ) =g( \xi ) g^{-1}( \xi ) h( \xi ) = h( \xi )
$$
つまり、\( g( \xi ) \) の逆元である \( g^{-1}( \xi ) \) が存在すれば、\( X( \xi ) \) も存在することになります。もし \( g^{-1}( \xi ) \) が存在しなければ、\( X( \xi ) \) も存在しません(この部分の証明が必要な気がします)。なので、\( g( \xi ) X( \xi ) = h( \xi ) \) となるような \( X( \xi ) \) が存在することを示すことは、\( g^{-1}( \xi ) \) が存在することを示すことと同値であるといえます(いえると思っています)。

たとえ話ですが、次のようなことを考えてみましょう。方程式 \( 2x = 3 \) を満たす整数 \( x \) は存在しません。有理数であれば \( x = \frac{3}{2} \) と答えることができます。 \( \frac{3}{2} \) が存在すれば、\( \frac{1}{2} \) も存在するといえます(こちらのたとえ話でもちょっと曖昧です)。

整数全体の集合は体ではありません。有理数全体の集合は体です。整数の場合、除法について閉じてはいませんが、有理数の場合は除法でも閉じています。体は四則演算ができる数の集合といってもいいものです。 \( g( \xi ) X( \xi ) = h( \xi ) \) となるような \( E_1 \) の要素 \( X( \xi ) = x_0 + x_1 \xi + \cdots + x_{n-1} \xi ^{n-1} \) が存在することを示すことは、\( E_1 \) 内で除法ができることを示すことでもあります。

逆元の存在についてちょっと曖昧にしたままですが、次に進みます。

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