最小多項式について、3つの性質を挙げています。本では3つの性質についての一般的な証明がなされていますが、ここでは具体例を使ってその証明を見ていきたいと思います。
\( \alpha \) が \( K \) 上代数的のとき、\( \alpha \) を根にもつ \( K \) 内の \( 0 \) でない多項式の中で最低次数のものを選び、次にそれに適当な \( K \) の要素をかけて、その最高次の係数を \( 1 \) にしたものをつくり、これを \( f(x) \) で表わす。するとこの多項式 \( f(x) \) について、次の3つの性質がなりたつ。例として、 \( \sqrt{2} \) の有理数体上の最小多項式 \( x^2 -2 \) を見てみます。上にならい、\( f(x) = x^2 -2 \) とします。\( x^2 -2 \) は \( \sqrt{2} \) を根にもち、\( \sqrt{2} \) は有理数体上代数的です。 \( \sqrt{2} \) を根にもつ、有理数係数の中で最低次数の多項式で、最高次の係数が1ですので、\( x^2 -2 \) は \( \sqrt{2} \) の有理数体上の最小多項式となります。
- \( g(x) \) を \( g( \alpha ) = 0 \) のような \( K \) 内の多項式とすると \( g(x) \) は \( f(x) \) で割りきれる。
- \( f(x) \) は \( K \) 上既約である。
- \( f(x) \) は上のつくり方のもとで一意的に定まる。
\( g(x) \) を \( g( \sqrt{2} ) = 0 \) である有理数係数の多項式とします。\( g(x) \) は、\( f(x) \) よりも低次数の \( r(x) \) を用いて、\( g(x) = f(x) q(x) + r(x) \) と表すことができます。\( g(x) \) を \( f(x) \) で割った商を \( q(x) \) 、余りを \( r(x) \) として表わした等式です。
この等式の \( x \) に、\( \sqrt{2} \) を代入すると、\( g( \sqrt{2} ) = f( \sqrt{2} ) q( \sqrt{2} ) + r( \sqrt{2} ) \) となります。いま、\( f( \sqrt{2} ) = 0 \)、\( g( \sqrt{2} ) = 0 \) ですので、\( r( \sqrt{2} ) = 0 \) となります。
\( r( \sqrt{2} ) = 0 \) ということは、\( r(x) \) は \sqrt{2} を根にもちます。しかし、\( r(x) \) は 有理数係数の多項式で、その次数が\( f(x) \) よりも低次の多項式となりますので、零多項式でなければなりません。つまり、\( g(x) = f(x) q(x) + 0 = f(x) q(x) \) となり、\( g(x) \) は \( f(x) \) で割りきれることになり性質1がなりたちます。
また \( g(x) = f(x) q(x) \) ですので、\( f(x) \) は一意に定まります。\( g(x) \) を \( q(x) \) で割った商がいろいろな多項式になったら困ります。
さらに、もし \( f(x) = x^2 -2 \) が有理数体上で因数分解できたとすると、その因子の多項式のひとつは \( f(x) \) よりも低次で、\( x = \sqrt{2} \) で\( 0 \) になるものとなり、最小多項式のとり方に反します。したがって \( f(x) = x^2 -2 \) は有理数体上で既約です。
最小多項式の例として \( x^2 -2 \) で示しましたが、\( \alpha \) の \( K \) 上の最小多項式として上と同じやり方で、3つの性質を証明することが可能です。
最小多項式の性質
\( \alpha \) が \( K \) 上代数的のとき、\( \alpha \) を根にもつ \( K \) 内の \( 0 \) でない多項式の中で最低次数のものを選び、次にそれに適当な \( K \) の要素をかけて、その最高次の係数を \( 1 \) にしたものをつくり、これを \( f(x) \) で表わす。するとこの多項式 \( f(x) \) について、次の3つの性質がなりたつ。
\( \alpha \) が \( K \) 上代数的のとき、\( \alpha \) を根にもつ \( K \) 内の \( 0 \) でない多項式の中で最低次数のものを選び、次にそれに適当な \( K \) の要素をかけて、その最高次の係数を \( 1 \) にしたものをつくり、これを \( f(x) \) で表わす。するとこの多項式 \( f(x) \) について、次の3つの性質がなりたつ。
- \( g(x) \) を \( g( \alpha ) = 0 \) のような \( K \) 内の多項式とすると \( g(x) \) は \( f(x) \) で割りきれる。
- \( f(x) \) は \( K \) 上既約である。
- \( f(x) \) は上のつくり方のもとで一意的に定まる。
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