2019/12/07

第2章第2節の節末問題(問題2-1解答)

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第2節の節末問題。問題2-1の解答。
問題2-1 \( K \) 内の2つの多項式 \( f(x) , g(x) \neq 0 \) に対して
\( f(x) = q(x)g(x) + r(x) , \qquad \mathrm{deg} \ r(x) \lt \mathrm{deg} \ g(x) \)
となる \( q(x) , r(x) \) が定まることを \( f(x) \) の次数についての帰納法で示せ。また \( q(x) , r(x) \) の一意性を示せ。
わからなかったので解答を見ます。途中途中でコメントを入れながら記載していきます。
解答
(i) \( \mathrm{deg} \ f(x) \lt \mathrm{deg} \ g(x) \) のときは \( q(x) = 0, \ r(x) = f(x) \) にとればよい。
(ii) \( f(x) = a_0 x^n + \cdots , \ g(x) = b_0 x^m + \cdots \ (b_0 \neq 0 ) \) とし、\( n \geqq m \) として、次数が \( n \) より小さい \( f(x) \) に対してはなりたっているとする。
僕が覚えているおぼろげな記憶での(数学的)帰納法での証明は、\( n = 1 \) のときに成り立つことを証明して、次に \( n = k \) のときに成り立つと仮定して \( n = k+1 \) のときも成り立つことを証明するというような、ドミノ倒しのような証明の方法でした。なので、次数についての帰納法といわれたときに思ったのが、まず1次式の場合に成り立つことを証明して云々ということを考えていたのですが、ちょっとずれていたようです。

ここでは、まず (i) で \( \mathrm{deg} \ f(x) \lt \mathrm{deg} \ g(x) \) のとき、つまり \( f(x) \) の次数が \( g(x) \) の次数より小さいときに \( q(x) , r(x) \) が定まることを証明しています。そして (ii) で \( n \geqq m \) として、次数が \( n \) より小さい \( f(x) \) に対しては成り立っていることを仮定してすすめていきます。以下、上の(ii)の部分を重複して掲載しています。
(ii) \( f(x) = a_0 x^n + \cdots , \ g(x) = b_0 x^m + \cdots \ (b_0 \neq 0 ) \) とし、\( n \geqq m \) として、次数が \( n \) より小さい \( f(x) \) に対してはなりたっているとする。
$$
f_0(x) = f(x) - a_0 b_0^{-1} x^{n-m}g(x)
$$
をつくると \( \mathrm{deg} \ f(x) \lt n \) であるから (i) または帰納法の仮定により
$$
f_0(x) = q_0(x) g(x) + r_0(x) \qquad \mathrm{deg} \ r_0(x) \lt \mathrm{deg} \ g(x)
$$
となる \( q_0(x), r_0(x) \) が存在する。
さて、\( f_0(x) = f(x) - a_0 b_0^{-1} x^{n-m}g(x) \) はどこから出てきたのでしょう。\( g(x) \) の前に \( a_0 b_0^{-1} x^{n-m} \) がついています。\( b_0 \) の指数に \( -1 \)、\( x \) の指数に \( n-m \) があるので、おそらく \( \frac{ a_0 x^n }{ b_0 x^m } \) のことでしょう。 \( f(x) = a_0 x^n + \cdots , \ g(x) = b_0 x^m + \cdots \ (b_0 \neq 0 ) \) とおいているので、\( g(x) \) に \( f(x) \) の最高次の項を掛けて、\( g(x) \) の最高次の項で割っています。ということは、 \( f(x) \) の最高次の項に、 \( g(x) \) の最高次の項 をあわせたようなかたちです。

うまくいえませんが、多項式の割り算で、 \( f(x) \) を \( g(x) \) で割ったときの最初の引き算を表しているようです。(多項式の割り算の筆算をWeb上で表現できればもう少しわかりやすく表現できると思いますが、表現方法がわかりませんでした)

\( f(x) \) の最高次の項、つまり \( x^n \) の項を消しているので、\( f_0(x) \) の次数は \( n-1 \) 以下( \( \mathrm{deg} \ f(x) \lt n \) となります。そこで(i) または帰納法の仮定から、\( f_0(x) = q_0(x) g(x) + r_0(x) \) となる \( q_0(x), r_0(x) \) が存在することを確認しました。
よって
$$
\begin{eqnarray}
f(x) &=& f_0 (x) + a_0 b_0^{-1} x^{n-m} g(x) \\
&=& ( q_0(x) + a_0 b_0^{-1} x^{n-m} ) g(x) + r_0(x) \\
\end{eqnarray}
$$
となるので、\( q(x) = q_0(x) + a_0 b_0^{-1} x^{n-m} , \ r(x) = r_0(x) \) にとればよい。
\( f_0(x) = f(x) - a_0 b_0^{-1} x^{n-m}g(x) \) を \( f(x) = \) と式変形し、\( f_0(x) \) に \( f_0(x) = q_0(x) g(x) + r_0(x) \) を代入しています。そして、除法のアルゴリズムのかたちにして、\( q(x) = q_0(x) + a_0 b_0^{-1} x^{n-m} , \ r(x) = r_0(x) \) と定めることができるという流れです。

以上が帰納法による証明部分です。次に一意性の証明です。
また
\( f(x) = Q(x)g(x) + R(x), \qquad \mathrm{deg} \ R(x) \lt \mathrm{deg} \ g(x) \)
とも表わされたとすると
\( \{ q(x) - Q(x) \} g(x) = R(x) - r(x) \)
もし \( q(x) - Q(x) \neq 0 \) ならば左辺の次数は \( \mathrm{deg} \ g(x) \) 以上であり、右辺の次数は \( \mathrm{deg} \ g(x) \) より小さく矛盾である。よって
\( q(x) = Q(x), \qquad R(x) = r(x) \)


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