2019/12/22

【定理7】【定理8】の証明

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第3節続き。

定理7(クロネッカーの定理)と定理8の証明です。
定理7.(クロネッカー)
\( f(x) \) を体 \( K \) における定数でない多項式とするとき、\( K \) の拡大体 \( E \) で、\( f(x) \) がその中に根をもつものが存在する。
非常に簡潔に証明が書かれており、証明は「 \( f(x) \) の1つの既約因子をとり、これを用いて上でつくった拡大体 \( E_1 \) をつくればよい」のみ。
定理8.
\( \sigma \) を体 \( K \) から体 \( K' \) の上への同型写像とする。\( f(x) \) を \( K \) 内の既約多項式とし、その像を \( f'(x) \) とする。\( f( \alpha ) = 0 \) を満たす \( \alpha \) による拡大体を \( E = K( \alpha ) \) とし、\( f'( \alpha ' ) = 0 \) を満たす \( \alpha ' \) による拡大体を \( E' = K'( \alpha ' ) \) とする。すると \( \sigma \) は \( \alpha \) の像が \( \alpha ' \) であるような \( E \) から \( E' \) の上への同型写像に延長される。
証明 \( E \) の任意の要素 \( \theta \) は \( \theta = g( \alpha ) \) の形をしている。ここに \( g(x) \) は \( K \) 内の多項式で、その次数は \( f(x) \) よりも低いものである。\( \theta \) に \( g'( \alpha ' ) \) を像として対応づけよう。この写像は明らかに与えられた写像 \( \theta \) の延長であり、\( E \) を \( E' \) の上へ一対一に写像する。このとき2要素の和は像の和に写像されることは明らかである。また \( g( \alpha ) h ( \alpha ) = r ( \alpha ) \) とすると \( r( \alpha ) \) は \( g( \alpha ) h ( \alpha ) \) の \( f(x) \) を法とした剰余であり、したがって \( g(x) h(x) = q(x)f(x) + r(x) \) のような多項式 \( q(x) \) が存在する。ここで多項式の像を考えると \( g'(x) h'(x) = q'(x)f'(x) + r'(x) \) であり、\( x = \alpha ' \) に対して \( g'( \alpha ') h'( \alpha ') = r'( \alpha ') \) となる。よって2要素の積は像の積に写像される。
(証明終り)
そして、この定理8により、「1つの既約方程式の根によって生成された拡大体の構造は、その根の選び方に関係しない」という特性が示されたことになります。

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