数年前、わもん日めくりカレンダーのフレーズを英訳してみようという活動があった。わもんが世界へ広がる事前準備のため、また、異なる言語で表現することで、わもんの言葉のさらなる理解を深めるため、まずは、わもん日めくりカレンダーの短いフレーズの日本語を英語へ翻訳してみようという動きである。
そのなかで、気に入っているフレーズが、タイトルにある「Reverse EVIL to LIVE」である。日めくりカレンダーに採用されているわけではない。自分が作って自分が気に入っているだけである。直訳すると「災いを生にひっくり返せ」という意味である。
「evil」を逆から読むと「live」となることから作った。「evil」と「live」の綴りが逆であるというのは、柳瀬尚紀さんの『日本語は天才である』に書かれていたエピソードで知った。柳瀬さんが、日本語は天才であると考えたきっかけのひとつとして次のようなことが紹介されていた。
『不思議の国のアリス』でおなじみの、ルイス・キャロルが作った妖精物語を翻訳しようとしていたときのことである。姉の妖精シルヴィーは、弟ブルーノに言葉を教えていた。シルヴィーが「evil」と書いて何と読むかブルーノに質問した。ブルーノはわからなかったがしばらく考え、逆から読んで「live」と答えた。
このような物語をどう翻訳するか。簡単なのは、英語の綴りを書いて説明書きを入れることであるが、言葉遊びを説明するのは芸がない。柳瀬さんは考え、漢字を使って「咎―各人」と訳した。そして独創だと思っていたが、漢字の成り立ちを調べると「咎」は「各+人」であったので「日本語は天才である」と思ったらしい。
このエピソードから「evil」と「live」の関係を知ったのだが、タイトルの「Reverse EVIL to LIVE」というフレーズを作ったのは、日めくりカレンダーの9日のフレーズ「心の砂出し」からである。「不平不満は心の砂。スッキリと砂を出したら、本当の自分が光り出します。」という短い説明文がついている。「心の砂出し」と「Reverse EVIL to LIVE」は、一見結びつかない。ここには、私のなかで、もうひとつ中継地点がある。
それは、「吐けば叶う」というフレーズである。漢字「吐(く)」から「-(マイナス)」を取ると「叶(う)」になる。「-(マイナス)」は「砂出し」である。
「心の砂出し」の英訳を考えているとき、「心の砂出し」の説明文から「吐けば叶う」を連想した。それは漢字の言葉遊びであり、柳瀬さんのエピソードを思い出し、「Reverse EVIL to LIVE」とした次第。
「逆から読む」という英語を知らないが、「ひっくり返す、逆さにする」という意味で「reverse」がいいかと思った。「reverse」は「re-(後ろ)」+「-verse(詩、韻文)」であるため、言葉遊び的な雰囲気が出るだろう。「evil」「live」のv音と、「reverse」のv音がつながっているのもいい。
言葉遊びの要素がたくさん詰まっているので、「Reverse EVIL to LIVE」というフレーズは気に入っている。そして日本語訳は「吐けば叶う」だと思ってる。