
習作95(4:41)
変拍子の曲。サビ(冒頭)は8分の6拍子+α。Aメロ・Bメロは4拍子。
定理3 体Kの要素のn個の組全体がつくる行(あるいは列)ベクトル空間Knは、K上の次元nのベクトル空間である。証明は省略。
体Kの要素を次のように長方形状に並べたものを行列という。
(行列の図略)
1つの行列において、この行列を構成する行ベクトル(ai1, ai2, …, ain)の中で線形独立なものの最大個数を左行階数という。ただし、行ベクトルに対する体の要素の積を左側から行なうものとする。これを右側から行なうものとするとき、右行階数を定義できるし、同様に左、右の列階数を定義することができる。
定理4 任意の行列において、右列階数は左行階数に等しく、左列階数は右行階数に等しい。体が可換のときは、4つの数は互いに等しく、これをこの行列の階数と名づける。このあと、定理4の証明が続いているが、ここには書かない。
ベクトル空間のある部分集合が、そのベクトル空間の部分群になっていて、しかも体の任意の要素とその部分集合の任意の要素との積がふたたびその集合に属すとき、その部分集合を部分空間という。a1, a2, …, as がベクトル空間V の要素のとき、a1a1+a2a2+…+asas の形をした要素全体の集合は明らかに V の部分空間である。また次元の定義から部分空間の次元は全空間の次元をこえることはない。集合から部分集合がつくれるように、ベクトル空間でも部分空間がつくれる。部分集合と違うところは、部分空間ではそのベクトル空間の部分群となっていて、それがベクトル空間の定義を満たすという条件がつく。ベクトル空間の定義は以下。
V を有限次元n のベクトル空間とし、W が V の部分空間で同じ次元n であるとする。すると W=V である。というのは、その部分空間W は n個の線形独立なベクトルを含み、これらは V の一組の生成系をなすからである。
V を加群とし、その要素を a, b, … で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。部分空間の説明の次には、行ベクトル、列ベクトルの説明が続く。
- a(a+b)=aa+ab
- (a+b)a=aa+ba
- a(ba)=(ab)a
- 1a=a
体K の要素の s個の組 (a1, a2, …, as) を行ベクトルという。このような s個の組全体の集合は次の定義のもとで1つのベクトル空間になる。今後、列ベクトルをはじめ、行列や行列式も出てくるが、ブログでは書けない(書く術を知らない)ので、行列などは書かないことが多くなると思う。必要があれば、図を貼り付けるなどするかもしれないが、基本書かない方向でいく。
α)(a1, a2, …, as)=(b1, b2, …, bs) であるとは ai=bi, i=1, 2, …, s がなりたつこと。
β)(a1, a2, …, as)+(b1, b2, …, bs)=(a1+b1, a2+ b2, …, as+bs)
γ)K の要素b に対して b(a1, a2, …, as)=(ba1, ba2, …, bas)
また、s個の組を次のように縦に書いて、列ベクトルという。
(略)
まず、任意のベクトル a に対して n次元空間の n+1個のベクトル a, a1, a2, …, an は線形従属であり、その従属性を示す式において a の係数は 0 でない。そこでこれを a について解くことにより、a, a1, a2, …, an の線形和として表わされ a1, a2, …, an が生成系であることがわかる。本文では次に、部分空間の説明に入るが、線形独立や次元について確認のために、ここで節末問題の4-1、2を取り上げておこう。解答は省略する。
問題4-1ここまでをまとめる(箇条書き)と、次のようになる。
(1) a1, a2, …, an が線形独立であるための必要十分条件は、このうちどれをとっても他の線形和に等しくないことである。
(2) a1, a2, …, an が線形従属であるための必要十分条件は、このうちの適当な1つが他の線形和に等しいことである。
これを証明せよ。
問題4-2
n次元ベクトル空間V において、次の(1), (2)は同値であることを示せ。
(1) a1, a2, …, an は線形独立である。
(2) a1, a2, …, an は V の生成系である。
ベクトル a1, a2, …, an が線形独立であるとは、
ベクトル a1, a2, …, an が線形従属であるとは、
- x1a1+x2a2+…+xnan=0 ⇔ x1=0 ∧ x2=0 ∧ … ∧ xn=0
- a1, a2, …, an のうちどれをとっても他の線形和に等しくない
- x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在する
- a1, a2, …, an のうちの適当な1つが他の線形和に等しい
V の中で線形独立なベクトルの最大個数を、体K 上のベクトル空間V の次元という。
- V の中に任意個数の線形独立なベクトルが存在するならば次元は無限大である。
- V の中に n個の線形独立なベクトルが存在し、n個より多くのベクトルは必ず線形従属になっているとき、V の次元は n である。
V の要素の列 a1, a2, …, am が V の生成系であるとは、
- V の任意の要素 a が K の適当な要素 ai, i=1, 2, …, m を用いて a1, a2, …, am の線型和 a=Σ [i=1..m] aiai で表わすことができる
V が一組の生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数が V の次元である。
n次元ベクトル空間V において、
a1, a2, …, an は線形独立である ⇔ a1, a2, …, an は V の生成系である
定理2丁寧に読まなければわからなかったので、証明を引用し、それについての自分なりの解説的なコメントをつけてみる。証明は次からはじまる。
V が一組の生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数が V の次元である。
ai がすべて 0 ならば、V は零ベクトルだけからなる。1・0=0 であるから、零ベクトルは線形従属である。よって V の次元も、ai の中の線形独立な最大個数もともに 0 である。線形従属であるとは、x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在することをいう。零ベクトルに関しては 1・0=0 が成り立ち、0 でない K の要素(ここでは 1)が存在している。したがって零ベクトルは線形従属であり、V の次元も、ai の中の線形独立な最大個数もともに 0 である。
これに対して生成系 a1, a2, …, am の中の線形独立なベクトルの最大個数が r であるとする。このとき番号をつけかえて、a1, a2, …, ar が線形独立であるようにできる。r<m のときは r は線形独立な ai の最大個数であるから、r+1個のベクトル a1, a2, …, ar, ai (r<i≦m) は線形従属であり、したがって次の関係がある。a1, a2, …, ar が線形独立であるので、a1a1+a2a2+…+arar=0 の係数は 0 である。a1a1+a2a2+…+arar=0 の係数が 0 であり、a1a1+a2a2+…+arar+bai=0 の係数の中には 0 でないものが存在するので、b≠0 となる。a1a1+a2a2+…+arar+bai=0 を式変形して ai=-b-1(a1a1+a2a2+…+arar) を得る。
a1a1+a2a2+…+arar+bai=0ここで、係数の中には 0 でないものが存在する。もし b=0 であれば、a1, a2, …, ar が線形従属であることになってしまう。そこで b≠0 であり
ai=-b-1(a1a1+a2a2+…+arar)
よって、V の要素を生成系 a1, a2, …, am の線形和で表した式は、各 ai をこの式でおきかえることによって a1, a2, …, ar の線形和でおきかえることができる。そこで、a1, a2, …, ar だけで一組の生成系となることがわかる。V の要素の列 a1, a2, …, am が V の生成系であるとは、V の任意の要素 a が K の適当な要素 ai, i=1, 2, …, m を用いて a1, a2, …, am の線型和 a=Σ [i=1..m] aiai とできることをいう。ここでは、V の任意の要素が、a1, a2, …, ar の線形和で表すことができるので、a1, a2, …, ar だけで V の生成系となれる。
いま b1, b2, …, bt (t>r) を V の任意のベクトルとする。するとV の任意のベクトルを b1, b2, …, bt として、生成系である a1, a2, …, ar の線形和で表したものが bj=Σ[i=1..r]aijai である。a1, a2, …, ar が V の生成系であることから、V の任意の要素を a1, a2, …, ar の線形和で表すことができる。
bj=Σ[i=1..r]aijaiのような aij が存在する。ここで、ベクトル b1, b2, …, bt が線形従属であること、すなわち
x1b1+x2b2+…+xtbt=0となる非自明な xi が K の中に存在することを証明すればよい。
それには、この式で bj を Σ[i=1..r]aijai でおきかえると ai の線形和が得られ、ai の係数は Σ[j=1..t]xjaij となるのでx1b1+x2b2+…+xtbt=0 の式の bj を Σ[i=1..r]aijai でおきかえると
Σ[j=1..t]xjaij=0, i=1, 2, …, rとなる非自明な xj が存在すればよい。ところが t>r であるから、定理1 によってそのような xj の存在することが保証される。
(左辺)となり、ai の係数は Σ[j=1..t]xjaij となる。そこで、
=x1b1+x2b2+…+xtbt
=x1(Σ[i=1..r]ai1ai)+x2(Σ[i=1..r]ai2ai)+…+xt(Σ[i=1..r]aitai)
=x1(a11a1+a21a2+…+ar1ar)+x2(a12a1+a22a2+…+ar2ar)+…
+xt(a1ta1+a2ta2+…+artar)
Σ[j=1..t]xjaij=0, i=1, 2, …, rとなる非自明な xj が存在すればよく、t>r より xj の存在することが保証される。
以上のようにして r個より多い個数のベクトルは線形従属であるが、r個のベクトル a1, a2, …, ar は線形独立であるから、V の次元は r である。
V の中で線形独立なベクトルの最大個数を、体K 上のベクトル空間V の次元という。すなわち、まず V の中に任意個数の線形独立なベクトルが存在するならば次元は無限大である。これに対して V の中に n個の線形独立なベクトルが存在し、n個より多くのベクトルは必ず線形従属になっているとき、V の次元は n である。(体K 上のベクトル空間V の)次元とは、V の中で線型独立なベクトルの最大個数である。
次元とは何か。
まず、線型空間の任意の点を線型結合で一意に表せるベクトルの集合のことを、その線型空間の基底と呼ぶ。
そして、《基底の要素数》のことを次元と呼ぶ。
さらに、線型空間の任意の点を線型結合で表すのに《必要にして十分なベクトルの個数》が次元であるといってよい。
線型空間の任意の点を一意に表したい。そのために必要にして十分なベクトルの集合、これが基底だ。任意の点を一意に表すことから、基底は《線型空間全体を張る最小のベクトルの集合》であり、なおかつ《線型独立になる最大のベクトルの集合》ということも示せる。最小・最大というのは要素数の話だ。そして、基底の選び方は一通りとは限らないけれど、基底をどう選んだとしても、その要素数は変わらない――不変だ。『ガロア理論入門』の方では、基底については書かれていないが、同じことを述べている。
V の要素の列 a1, a2, …, am が V の生成系であるとは、V の任意の要素 a が K の適当な要素 ai, i=1, 2, …, m を用いて a1, a2, …, am の線型和 a=Σ [i=1..m] aiai とできることをいう。(引用者注:線型和の式をテキスト文字での表現にしています。)自分への確認も込めて。Σは i=1 から m までの和のことなので、以下のことだ。
Σ [i=1..m] aiai=a1a1+a2a2+…+amam
体K 上のベクトル空間V において、ベクトル a1, a2, …, an が線形従属であるとは、x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在することをいう。そうでないとき a1, a2, …, an を線形独立という。線形従属の説明を主としていたので、最初わかりにくく感じる。線形独立を主とした説明の方に慣れていたためであろう。たとえば次のようなものだ(結城浩『数学ガール/ガロア理論』より。ひとつ目の方は2次元での説明。)。
線型独立
V を《S 上の線型空間》として、v, w∈V および s, t∈S とする。
以下の条件が成り立つとき、ベクトルv とw は線型独立であるという。
sv+tw=0 ⇔ s=0 ∧ t=0線型独立ではないとき、ベクトルv とw は線型従属であるという。
線型独立は一次独立、線型従属は一次従属ともいう。
線型独立(一般化)『数学ガール/ガロア理論』での書き方で、『ガロア理論入門』での内容を書くと、次のようになる。
V を《S 上の線型空間》として、vk∈V および sk∈S とする(k=1, 2, 3, …, m)。以下が成り立つとき、ベクトル v1, v2, …, vm は線型独立であるという。
s1v1+s2v2+…+smvm=0 ⇔ s1=0 ∧ s2=0 ∧ … ∧ sm=0成り立たないとき、ベクトル v1, v2, …, vm は線型従属であるという。
線型従属覚えるには線型独立を主として覚えた方がわかりやすいが、使うにはどちらも理解しておいたほうがいい。
V を《S 上の線型空間》として、vk∈V および sk∈S とする(k=1, 2, 3, …, m)。以下が成り立つとき、ベクトル v1, v2, …, vm は線型従属であるという。
s1v1+s2v2+…+smvm=0 ⇔ s1≠0 ∨ s2≠0 ∨ … ∨ sm≠0成り立たないとき、ベクトル v1, v2, …, vm は線型独立であるという。
V を S 上の線型空間と見なすとき、ベクトルv とw が線型独立であることは次のようにして表せる。もちろん(?)僕は、線型空間として意識して使っていたわけではない。ただ、こんなものだとしていただけである。
sv+tw=0 ⇔ s=0 ∧ t=0 (s, t∈S)座標空間を R 上の線型空間と見なすとき、ベクトルe x とey が線型独立であることは次のようにして表せる。
axC を R 上の線型空間と見なすとき、線型独立の条件は、実数と複素数の基本的な命題として登場する。ex +ayey =0 ⇔ ax=0 ∧ ay=0 (ax, ay∈R)
a+bi=0 ⇔ a=0 ∧ b=0 (a, b∈R)Q(√2) を Q 上の線型空間と見なすとき、線型独立の条件はこうだ。
p+q√2=0 ⇔ p=0 ∧ q=0 (p, q∈Q)
定理1連立方程式を習ったときだと思うが、未知数が2つ(たとえばx, y)あるのに、方程式が1つだったら、x, y は求められない(不定となる)ということを聞いた。そのときに証明があったのかどうかは覚えていない。ただ、そうなんだ、というくらいにしか頭に残っていない。
未知数の個数n が方程式の個数m をこえるとき、同次線形連立方程式は非自明な解をもつ。
a11x1+a12x2+…+a1nxn=0その証明をそのまま書くとただの丸写しになるので、概略だけを残しておこう。
a21x1+a22x2+…+a2nxn=0
…………
am1x1+am2x2+…+amnxn=0
L1=L2=…=Lm=0もしすべての i, j に対して aij=0 であれば、x1, x2, …, xn の任意の値が解になる(非自明な解が存在する)。
L1=0ちょっと添字が多くて見にくいかもしれないが、たとえば上の2番目の方程式は、L1=0 の両辺に a21/a11 を掛けたものを、L2=0 から引いたものである。連立方程式を解くときに式に①、②と番号をつけて、「①-②✕2 より」としているようなもので、x1 の係数をそろえるために a21/a11 を掛けている(ここでは a11≠0 である)。
L2-a21a11-1L1=0
…………
Lm-am1a11-1L1=0
体K において mn個の要素文字が多い……。が、怖気づいてはいけない(と、自分に言い聞かせる)。
aij、 i=1, 2, …, m、 j=1, 2, …, nが与えられたとき、次の連立方程式の K における解xiを考える。
a11x1+a12x2+…+a1nxn=0このように右辺が 0 の連立方程式を同次線形連立方程式という。x1=0, …, xn=0 は解であり、これを自明な解といい、x1, x2, …, xn の中に 0 でないものが存在するとき、この解を非自明な解という。
a21x1+a22x2+…+a2nxn=0
…
am1x1+am2x2+…+amnxn=0
x+2y=0の連立方程式で考えてみる。
3x+4y=0
x+2y=0のような連立方程式である。
2x+4y=0
V を加群とし、その要素を a, b, … で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。ところで、ベクトル空間は線型空間とも呼ばれる。結城浩『数学ガール/ガロア理論』に、線型空間の公理が載っていたので比べてみよう。
- a(a+b)=aa+ab
- (a+b)a=aa+ba
- a(ba)=(ab)a
- 1a=a
線型空間の公理『ガロア理論入門』の方では左ベクトル空間と右ベクトル空間を区別している点と、記号が異なる点を除けば、同じことを言っている。『数学ガール/ガロア理論』での定義(公理)には VS1 というような番号がふってあるが、これはおそらく vector space の略である(もしかすると、vector と scalar かもしれない)。
アーベル群V と体S が以下の公理を満たすとき、
V を《S 上の線型空間》という。
ただし、v, w は V の任意の元、s, t は S の任意の元とする。
VS1 sv は V の要素になる。(ベクトルのスカラー倍)
VS2 s(v+w)=sv+sw が成り立つ。(スカラー倍の分配法則)
VS3 (s+t)v=sv+tv が成り立つ。(ベクトルの分配法則)
(左辺の+はスカラーの和、右辺の+はベクトルの和)
VS4 (st)v=s(tv) が成り立つ。(スカラー倍の結合法則)
VS5 1v=v が成り立つ。
問題2-1 体K 上のベクトル空間V においてベクトル空間(左ベクトル空間)の定義は以下。
(1) a0=0、(-1)a=-a を証明せよ。
(2) aa=0 ならば a=0 または a=0 であることを証明せよ。
V を加群とし、その要素を a, b, … で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。前回、0a=0 の証明があったので、それも見ておく。
- a(a+b)=aa+ab
- (a+b)a=aa+ba
- a(ba)=(ab)a
- 1a=a
aa=(a+0)a=aa+0a
∴0a=0
aa=a(a+0)=aa+a0本での解答は以下。
∴a0=0
a0=a(0+0)=a0+a0 から a0=0これはOKだろう。
a+(-1)a={1+(-1)}a=0a=0 から (-1)a=-aなるほど、a の属する V は加群、つまり、加算に関する可換群なので、a の逆元 -a が存在することを利用したのだろう。
aa=0 で a≠0 とすると、K の中に a-1 が存在する。なるほど、今度は K の中に、乗算に関して0以外の要素に逆元a-1 が存在することを利用したのか。
a-1(aa)=(a-1a)a=1a=a, a-10=0から a=0 となる。
V を加群とし、その要素を a, b, … で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。このブログではわかりにくいかもしれないが、V の要素は太字のアルファベットで記載されている。
- a(a+b)=aa+ab
- (a+b)a=aa+ba
- a(ba)=(ab)a
- 1a=a
V を K 上の左ベクトル空間とし、0 と 0 をそれぞれ K と V の零とするとき、はじめの式とは、0a=0 のことである。0a=0 を導いたやり方を丁寧に書いてみます(イコールの位置などそろえておらず、すみません)。
0a=0、 a0=0がなりたつことが容易に確かめられる。たとえばはじめの式は、次の等式から導くことができる。
aa=(a+0)a=aa+0a
aa上の最初、1行目の aa は、「K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて」と、すでに定義されているもの。2行目では、その a を a+0 としている。a は体K の要素で、体では加法が定義され、零元(単位元)があるので、a=a+0 である。そして3行目は、2行目の式に空間ベクトルの条件のひとつ、(a+b)a=aa+ba を使っている。1行目と3行目をつなげると、aa=aa+0a で、右辺の 0a が、0a=0 でなければならない。
=(a+0)a
=aa+0a
問題2-1 体K 上のベクトル空間V において
(1) a0=0、(-1)a=-a を証明せよ。
(2) aa=0 ならば a=0 または a=0 であることを証明せよ。
演算の定義(演算に関して閉じている)整数全体の集合ではなく、有理数全体の集合とすると、除法に関しても閉じている。
集合Gが演算★に関して閉じているとは、集合Gの任意の要素 a, b に関して、以下が成り立つこと。
a★b∈G
環の定義(環の公理)整数を抽象化して環という概念をつくったのか、それとも環という概念ができてから整数にも当てはまったのか、歴史的な事情は知らない。ともかく、整数全体の集合は、加法と乗法に関して環になる。整数環という。
以下の公理を満たす集合を環と呼ぶ。
- 演算+(加法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(0と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- すべての要素について逆元が存在する
- 演算×(乗法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(1と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- 演算+と×に関して――
- すべての要素について分配法則が成り立つ
逆元の定義(逆元の公理)整数ではなく、有理数全体の集合とすると、乗法に関する逆元が存在するので、除法が可能である。有理数全体の集合には「環」ではなく「体」という名前がついている(「体の定義」参照)。「体」と「環」の違いは、乗法に関する逆元が存在するかしないかの違いである。
aを集合Gの要素とし、eを単位元とする。aに対して、以下の式を満たすb∈Gを、演算★に関するaの逆元と呼ぶ。
a★b=b★a=e
Z={…, -2, -1, 0, 1, 2, …}
Z/2Z={0, 1}と書く。3 で割った余りならば、余りは 0 か 1 か 2 になるので、
Z/3Z={0, 1, 2}と書ける。
Z/mZ={0, 1, 2, …, m-1}と書くことができる。集合Z/mZ には剰余環という名前がついている。加法、乗法を mod m で考えれば環となるからである。整数環の要素数が無限であったのに対して、剰余環は有限の要素数である。
余りの定義(自然数)自然数だけでなく、整数でも使えるようにしよう。ゼロ割りをしないように b≠0 として、余りの条件の不等式に b が負数のときも考えて絶対値 |b| を使う。
a を b で割ったときの商 q と余り r を、次式で定義する。
a=bq +r(0≦r<b)ここで a, b は自然数、q, r は自然数または0とする。
余りの定義(整数)商は英語で quotient、余りは remainder なので、商を q、剰余(余り)を r で表すことが多い。
a を b で割ったときの商 q と余り r を、次式で定義する。
a=bq +r(0≦r<|b|)a, b, q, r は整数で、b≠0 とする
mod の定義(整数)たとえば、7 を 3 で割ると、商は 2 で、余りは 1 となる。mod を使って書くと、次のようになる。余りの定義式の方での様子も書いておく。
a, b, q, r は整数で、b≠0 とする。
a mod b =r ⇔ a=bq +r(0≦r<|b|)
7 mod 3 =1 ⇔ 7=3✕2+17 を -3 で割ると、商は -2 で、余りは 1 となる。
7 mod (-3) =1 ⇔ 7=(-3)✕(-2)+110 を 3 で割ると、商は 3、余りは 1。
10 mod 3 =1 ⇔ 10=3✕3+17 と 10 は同じではないが、7 を 3 で割った余りと、10 を 3 で割った余りは等しい。このことを次のように書く。
7 ≡ 10(mod 3)記号≡の名前(読み方)は知らないが、合同を表す。=を使った式を等式というが、≡を使った式を合同式という。7 ≡ 10(mod 3)という合同式は「3 を法として、7 と 10 は合同である」と読む。mod は modulo の略で、法とか剰余という意味。
a ≡ b (mod m) ⇔ a mod m = b mod mである。
(a-b) mod m =0m を法として合同な数同士の差は、m の倍数になることを示している。
mod の言い換え合同式について、a ≡ b(mod m)のとき、以下が成り立つ。
a, b, m は整数で、m≠0 とする。
a ≡ b(mod m) m を法として合同
⇔ a mod m = b mod m m で割った余りが等しい
⇔ (a-b) mod m =0 差が m の倍数
a+C ≡ b+C (mod m) 両辺に足しても合同しかし、等式とは異なり、除算(割り算)では成り立たない場合がある。
a-C ≡ b-C (mod m) 両辺から引いても合同
a✕C ≡ b✕C (mod m) 両辺に掛けても合同
15 ≡ 75 (mod 12)両辺を3で割った場合は、合同ではない。
(15÷3) mod 12 = 5 mod 12 = 5両辺を5で割った場合は、合同である。
(75÷3) mod 12 = 25 mod 12 = 1
(15÷5) mod 12 = 3 mod 12 = 3合同式では、上の例でいうと、法となっている12と、1以外の共通の約数を持っていない場合、つまり互いに素な数であれば除算が可能である。12と3は互いに素ではない。12と5は互いに素である。
(75÷5) mod 12 = 15 mod 12 = 3
合同式と除算
a, b, C, m を整数とする。
C が m と互いに素のとき、以下が成り立つ。
a✕C ≡ b✕C (mod m) ⇒ a ≡ b (mod m)
a = bq + r (0≦r<b)となる(a, b, q, r は自然数または 0 とする)。r は余りなので、0≦r<b という条件がついている。「20÷7=1…13」のように、余り(r)が割る数(b)より大きくなってはいけない。
盗賊団の会話が、橋の下から聞こえる。盗んできた反物を分配しようとしているようだ。「7反ずつ分けると8反余るし、8反ずつ分けると7反足りない。どうしたものかなあ」『塵劫記』では答えとして、「盗賊は8足す7で15人、反物は15人掛ける8反に7反足りないから113反」としか載っていない。盗賊の人数を x として、方程式を立てて――と話が続く。そして『塵劫記』には(盗人算として)これ1問しか出ていないので、「盗賊の人数や盗品の数が違っても、読者は解けたのだろうか?」として、数字を変えた盗人算の例を挙げる。
さて、盗賊は何人で、反物は何反あるか。
盗賊団の会話が、橋の下から聞こえる。盗んできた反物を分配しようとしているようだ。「7反ずつ分けると6反余るし、9反ずつ分けると4反足りない。どうしたものかなあ」そして方程式を立てて、盗賊の人数は5人、反物は41反という答えを出す。
さて、盗賊は何人で、反物は何反あるか。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)前回、問題文中にあるxq=xというのはフェルマーの小定理のことではないか、ということを書きました。
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
フェルマーの小定理前回の例で挙げていたのは有限体Fp(=素数 p を法とする剰余環 Z/pZ)で、乗法の演算として mod を使ったものでしたので、フェルマーの小定理が出てきてもおかしくはありません。
p が素数,a が任意の自然数のとき
ap ≡ a mod p
特に p が素数で,a が p と互いに素な自然数のとき
ap−1 ≡ 1 mod p
問題1-3
p を素数とし、
Zp= {0, 1, 2, …, p-1}とする。a∈Zp、b∈Zp のとき、a⊕b、a○b をそれぞれ a+b、ab を p で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
(解答)集合 Zp が、p が素数であるときには、演算⊕、○のもとで可換体である、ということが問題となっています。
体の条件のうちの大部分は簡単に示せるので省略する。a≠0 のとき a○b=1 となる b の存在を示す。a は 1, 2, …, p-1 のどれかであるから、p と互いに素である。よって ax+py=1 となるような整数x, yが存在する。このとき x=pq+r (0≦r<p) のような q, r をとると、
apq + ar + py = 1 ∴ar = p (- aq - y) + 1よって ar を p で割った余りは 1 であり、r∈Zp であるから a○r=1。この r を b にとればよい。
2✕0=0 ⇒ 4 で割った余りは 0特に 1 が現れないというのが重要で、1 が現れないということは、2 に対する逆元が存在しないということになります。つまり、集合 Z4 は体の定義から外れる、体ではないということになります。
2✕1=2 ⇒ 4 で割った余りは 2
2✕2=4 ⇒ 4 で割った余りは 0
2✕3=6 ⇒ 4 で割った余りは 2
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
02=0F3={0, 1, 2}
12=1
03=0F5={0, 1, 2, 3, 4}
13=1
23=2 (mod 3)
05=0F7{0, 1, 2, 3, 4, 5, 6}
15=1
25=2 (mod 5)
35=3 (mod 5)
45=4 (mod 5)
07=0確かに、有限体F2、F3、F5、F7において、任意の要素xq=xを満たします。mod の性質が絡んでいるようですね。
17=1
27=2 (mod 7)
37=3 (mod 7)
47=4 (mod 7)
57=5 (mod 7)
67=6 (mod 7)
フェルマーの小定理:あ、先の要素ごとの計算、書き方まずかったですかね。mod では「=(イコール、等号)」ではなく「≡」を使います。「≡」は何と読むか知りませんが、"合同(ごうどう)"と入力して変換すると出てきます。等号(=)を使った式を等式といいますが、合同(≡)を使った式を合同式といいます。
p が素数,a が任意の自然数のとき
ap ≡ a mod p
特に p が素数で,a が p と互いに素な自然数のとき
ap−1 ≡ 1 mod p
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xは xq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)解答を読んでもよくわからないため、具体的に有限体の例を使って、問題と解答に書かれていることを確認していきたいと思います。
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
Fp=Z/pZ={0, 1, 2, …, p-1}加法と乗法を mod p(pで割った剰余)で考えます。(環、整数環、剰余環、mod についてもどこかでまとめておきたいですが、ここでは省略します。)
F2=Z/2Z={0, 1}素数は無限に存在しますので、有限体Fpの全てを挙げることはできません。ひとまずF7までで。
F3=Z/3Z={0, 1, 2}
F5=Z/5Z={0, 1, 2, 3, 4}
F7=Z/7Z={0, 1, 2, 3, 4, 5, 6}
…
問題1-4……わからないので解答を見ます。
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xは xq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(問題1-4解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
エミール・アルティンが線型代数の理論を用いてガロア理論を再整理した数学書です。章ごとの概要や解答付きの練習問題を訳者が付記しているので自習にも向いています。また、巻末の佐武一郎による解説では、ガロア理論の要諦が数ページにまとめられています。
問題1-3 p を素数とし、前回、集合 Zp について、
Zp = {0, 1, 2, …, p-1}とする。a∈Zp、b∈Zp のとき、a⊕b、a○b をそれぞれ a + b、ab を p で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
問題1-3 p を素数とし、先に、本にある解答を載せておきます。
Zp = {0, 1, 2, …, p-1}とする。a∈Zp、b∈Zp のとき、a⊕b、a○b をそれぞれ a + b、ab を p で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
体の条件のうちの大部分は簡単に示せるので省略する。a ≠ 0 のとき a○b = 1 となる b の存在を示す。a は 1, 2, …, p-1 のどれかであるから、p と互いに素である。よって ax + py = 1 となるような整数 x, y が存在する。このとき x = pq + r (0≦r<p) のような q, r をとると、大部分が省略されています……。
apq + ar + py = 1 ∴ar = p (- aq - y) + 1よって ar を p で割った余りは 1 であり、r∈Zp であるから a○r = 1。この r を b にとればよい。
a と b が互いに素なとき a, 2a, 3a, ⋯, (b−1)a を b で割った余りは全て異なる(※)ので,余りが1となるようなものが存在する。問題1-3での集合 Zp の要素は、0 と p-1 以下の自然数で、pは素数ですので、 Zp の 0 以外の要素と p は互いに素の関係にあります。先の証明の内容「a と b が互いに素なとき a, 2a, 3a, ⋯, (b−1)a を b で割った余りは全て異なる」で、a を 1、b を p とすると、Zp の 0 以外の要素 1, 2, ……, p-1 をpで割った余りは全て異なるということになります(p よりも小さい自然数を p で割るので、そのときの商は 0 で、割られる数そのものがそのまま余りとなります)。
それを ma とおき,b で割った商を n とおくと,
ma = bn + 1つまり,am − bn = 1 となり(m, −n) は整数解になっている。
※の証明(背理法)
ia と ja ( i > j ) を b で割った余りが同じだと仮定すると,(i − j)a は b の倍数となるはずだが,1≦ i − j < b かつ a と b は互いに素なのでこれは矛盾。
問題1-1
(1) 2要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。
(2) 3要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。
問題1-2
(1) a、bを整数とするとき、a+biの全体は体をつくらない。理由を述べよ。
(2) a、bを有理数とするとき、a+biの全体は体をつくる。これを証明せよ(この体をガウスの数体という)。
問題1-3
pを素数とし、
Zp={0, 1, 2, …, p-1}とする。a∈Zp、b∈Zpのとき、a⊕b、a○bをそれぞれa+b、abをpで割ったときの余り、と定める。すると集合Zpは演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
体の定義(体の公理)有理数全体の集合は、この体の定義を満たしていることを確認しましょう。
以下の公理を満たす集合を体と呼ぶ。
- 演算+(加法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(0と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- すべての要素について逆元が存在する
- 演算×(乗法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(1と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- 0以外のすべての要素について逆元が存在する
- 演算+と×に関して――
- すべての要素について分配法則が成り立つ
演算の定義(演算に関して閉じている)有理数全体の集合における加法・乗法についていうと、有理数同士で足し算や掛け算をすると、その計算結果(演算の結果)は有理数となり、有理数全体の集合の要素となります。どのような有理数を足し算しても、掛け算しても、やはり有理数です。
集合Gが演算★に関して閉じているとは、集合Gの任意の要素a, bに関して、以下が成り立つこと。
a★b∈G
単位元の定義(単位元eの公理)有理数体では、演算+(加法)における単位元は0になります。任意の有理数に0を足しても、逆に、0に任意の有理数を足しても、演算結果はその任意の有理数のままです。0は有理数の集合の要素ですので、有理数全体の集合の中に、加法における単位元0が存在するといえます。
集合Gの任意の要素aに対して、以下の式を満たす集合Gの要素eを、演算★における単位元と呼ぶ。
a★e=e★a=a
結合法則加法や乗法の記号を使って書くと、(a+b)+c=a+(b+c)、(a×b)×c=a×(b×c)です。有理数での加法、乗法では結合法則が満たされています。
(a★b)★c=a★(b★c)
交換法則加法ではa+b=b+a、乗法ではa×b=b×aです。足し算や掛け算に慣れていると、足し算、掛け算では当たり前のことのように思いますが、算数の計算では「このようにしましょう」と決めて(定義して)計算しています。有理数での足し算や掛け算でも交換法則を満たしています。
a★b=b★a
逆元の定義(逆元の公理)有理数でいえば、たとえば2について、演算+に関する2の逆元は-2です。2+(-2)=(-2)+2=0のように、足して0(加法における単位元)になるもの。演算×に関しては、2の逆元は1/2です。2×(1/2)=(1/2)×2=1で、乗法における単位元1となる逆元が存在します。ただし、乗法に関しては、0以外の要素という条件がついています。0にどのような有理数を掛けても1となることはありません。
aを集合Gの要素とし、eを単位元とする。aに対して、以下の式を満たすb∈Gを、演算★に関するaの逆元と呼ぶ。
a★b=b★a=e
分配法則2つの演算を結びつけている法則です。数学の授業での式の展開を思い出します。もちろん、有理数の演算+と×に関しても分配法則は成り立っています。
(a+b)×c=(a×c)+(b×c)
乗法と加法とよばれる2つの演算が定義されている集合を体という。
――エミール・アルティン『ガロア理論入門』
体の定義(体の公理)一方、『ガロア理論入門』では、以下のように書かれています。
以下の公理を満たす集合を体と呼ぶ。
- 演算+(加法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(0と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- すべての要素について逆元が存在する
- 演算×(乗法)に関して――
- 閉じている
- 単位元が存在する(1と呼ぶ)
- すべての要素について結合法則が成り立つ
- すべての要素について交換法則が成り立つ
- 0以外のすべての要素について逆元が存在する
- 演算+と×に関して――
- すべての要素について分配法則が成り立つ
――結城浩『数学ガール/フェルマーの最終定理』
正確にいえば、体とは、まず加法についてアーベル群をなし、次に零を除いた残りが乗法について群をなし、しかも2つの群演算が分配法則によって結びつけられている集合である。ここでは体について3つのことが書かれています。「加法についてアーベル群をなす」こと、「零を除いた残りが乗法について群をなす」こと、「2つの群演算が分配法則によって結びつけられている」ことの3つです。
――エミール・アルティン『ガロア理論入門』
群の定義(群の公理)そして、任意の元について交換法則を満たす群がアーベル群です。可換群ともいいます。アーベルは数学者の名前です。
以下の公理を満たす集合Gを群と呼ぶ。
- 演算★について閉じている。
- 任意の元に対して、結合法則が成り立つ。
- 単位元が存在する。
- 任意の元に対して、その元に対する逆元が存在する。
――結城浩『数学ガール/フェルマーの最終定理』