問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)前回、問題文中にあるxq=xというのはフェルマーの小定理のことではないか、ということを書きました。
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
フェルマーの小定理前回の例で挙げていたのは有限体Fp(=素数 p を法とする剰余環 Z/pZ)で、乗法の演算として mod を使ったものでしたので、フェルマーの小定理が出てきてもおかしくはありません。
p が素数,a が任意の自然数のとき
ap ≡ a mod p
特に p が素数で,a が p と互いに素な自然数のとき
ap−1 ≡ 1 mod p
次なる疑問は、有限個の要素からなる体であれば、その有限体は、素数 p を法とする剰余環であるかどうかです。
そこで思い出されるのが、問題1-3です。
問題1-3
p を素数とし、
Zp= {0, 1, 2, …, p-1}とする。a∈Zp、b∈Zp のとき、a⊕b、a○b をそれぞれ a+b、ab を p で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
(解答)集合 Zp が、p が素数であるときには、演算⊕、○のもとで可換体である、ということが問題となっています。
体の条件のうちの大部分は簡単に示せるので省略する。a≠0 のとき a○b=1 となる b の存在を示す。a は 1, 2, …, p-1 のどれかであるから、p と互いに素である。よって ax+py=1 となるような整数x, yが存在する。このとき x=pq+r (0≦r<p) のような q, r をとると、
apq + ar + py = 1 ∴ar = p (- aq - y) + 1よって ar を p で割った余りは 1 であり、r∈Zp であるから a○r=1。この r を b にとればよい。
仮に、素数でない数(たとえば 4)で見てみましょう。Z4={0, 1, 2, 3}を考えます。
Z4における、a⊕b、a○b の演算表は以下のようになります(演算表では⊕、○ではなく、+、✕と書いています)。
注目してほしいのは、乗法の演算表で、掛け算の九九での言い方を借りると、2 の段のところです(黄色で目立たせています)。以前、有限体F2、F3、F5、F7の演算表を挙げましたが、それらの演算表と比べてみるとわかりやすいかもしれません。
集合 Z4 の要素である 2 を使った掛け算(mod)の演算結果は、0 と 2 だけで、1 と 3 は現れません。
2✕0=0 ⇒ 4 で割った余りは 0特に 1 が現れないというのが重要で、1 が現れないということは、2 に対する逆元が存在しないということになります。つまり、集合 Z4 は体の定義から外れる、体ではないということになります。
2✕1=2 ⇒ 4 で割った余りは 2
2✕2=4 ⇒ 4 で割った余りは 0
2✕3=6 ⇒ 4 で割った余りは 2
0 と 正の整数全体からなる集合をZとすると、集合Zの要素の数は無限になります。問題1-3における集合 Zp は、集合Zに p-1 という上限(この言い方が適切かどうかはわかりません)をつけて有限とした集合です。このとき、p が素数であるときに、mod での加法・乗法に関して Zp は体(可換体)と見なすことができます。
集合Z自体も、逆元をもたないため、体とは言えません。しかし、p-1 という上限をつけて有限とし(これはつまり、要素数を p 個としたということです)、演算を mod p での加法・乗法とすると、問題1-3の解答にあるように、p が素数であるときの集合 Zp の(0を除く)全ての要素が逆元を持ち、体と見なせます。
長くなってきたので、詳しい定義などは書きませんが、整数全体の集合Z(上と同じ記号を使ってすみません)は、体ではなく「環(整数環)」という名前がついています。そして整数環Z(無限の要素数)を有限(m 個)にして、mod m での演算として考えたものを剰余環 Z/mZ といいます。そして、その剰余環Z/mZ で m が素数のとき、有限体として見なすことができるのです。
問題1-3では、剰余環 Z/mZ で m が素数のときには有限体になること、問題1-4では、有限体であれば、素数 p を法とした剰余環 Z/pZ であることを言っているように思えます。
問題1-4については、ひとまずここまでとしたいと思います。
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