2019/11/22

【定理2】(ベクトル空間の次元)

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第4節「ベクトルの従属性、独立性」の続き。定理2 と、その証明。
定理2
V が一組の生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数が V の次元である。
丁寧に読まなければわからなかったので、証明を引用し、それについての自分なりの解説的なコメントをつけてみる。証明は次からはじまる。
ai がすべて 0 ならば、V は零ベクトルだけからなる。1・00 であるから、零ベクトルは線形従属である。よって V の次元も、ai の中の線形独立な最大個数もともに 0 である。
線形従属であるとは、x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在することをいう。零ベクトルに関しては 1・00 が成り立ち、0 でない K の要素(ここでは 1)が存在している。したがって零ベクトルは線形従属であり、V の次元も、ai の中の線形独立な最大個数もともに 0 である。
これに対して生成系 a1, a2, …, am の中の線形独立なベクトルの最大個数が r であるとする。このとき番号をつけかえて、a1, a2, …, ar が線形独立であるようにできる。r<m のときは r は線形独立な ai の最大個数であるから、r+1個のベクトル a1, a2, …, ar, ai (r<i≦m) は線形従属であり、したがって次の関係がある。
a1a1+a2a2+…+arar+bai0
ここで、係数の中には 0 でないものが存在する。もし b=0 であれば、a1, a2, …, ar が線形従属であることになってしまう。そこで b≠0 であり
ai=-b-1(a1a1+a2a2+…+arar)
a1, a2, …, ar が線形独立であるので、a1a1+a2a2+…+arar0 の係数は 0 である。a1a1+a2a2+…+arar0 の係数が 0 であり、a1a1+a2a2+…+arar+bai0 の係数の中には 0 でないものが存在するので、b≠0 となる。a1a1+a2a2+…+arar+bai0 を式変形して ai=-b-1(a1a1+a2a2+…+arar) を得る。
よって、V の要素を生成系 a1, a2, …, am の線形和で表した式は、各 ai をこの式でおきかえることによって a1, a2, …, ar の線形和でおきかえることができる。そこで、a1, a2, …, ar だけで一組の生成系となることがわかる。
V の要素の列 a1, a2, …, am が V の生成系であるとは、V の任意の要素 a が K の適当な要素 ai, i=1, 2, …, m を用いて a1, a2, …, am の線型和 a=Σ [i=1..m] aiai とできることをいう。ここでは、V の任意の要素が、a1, a2, …, ar の線形和で表すことができるので、a1, a2, …, ar だけで V の生成系となれる。
いま b1, b2, …, bt (t>r) を V の任意のベクトルとする。すると
bj=Σ[i=1..r]aijai
のような aij が存在する。ここで、ベクトル b1, b2, …, bt が線形従属であること、すなわち
x1b1+x2b2+…+xtbt0
となる非自明な xi が K の中に存在することを証明すればよい。
V の任意のベクトルを b1, b2, …, bt として、生成系である a1, a2, …, ar の線形和で表したものが bj=Σ[i=1..r]aijai である。a1, a2, …, ar が V の生成系であることから、V の任意の要素を a1, a2, …, ar の線形和で表すことができる。

いま証明したいことは、「V が一組の生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数が V の次元である」ことである。生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数を r としているので、V の次元が r であるといいたい。a1, a2, …, ar が生成系であることが判明しているので、あとはこれが最大個数かどうかを調べる必要がある。そのため、t>r として任意のベクトルを線型和で表し、それが線型従属であることがわかれば、a1, a2, …, ar、つまり r 個のベクトルが線型独立で最大個数となる。ベクトル b1, b2, …, bt が線型従属であることを証明するために、x1b1+x2b2+…+xtbt0 となる非自明な xi が K の中に存在することを証明する。
それには、この式で bj を Σ[i=1..r]aijai でおきかえると ai の線形和が得られ、ai の係数は Σ[j=1..t]xjaij となるので
Σ[j=1..t]xjaij=0,  i=1, 2, …, r
となる非自明な xj が存在すればよい。ところが t>r であるから、定理1 によってそのような xj の存在することが保証される。
x1b1+x2b2+…+xtbt0 の式の bj を Σ[i=1..r]aijai でおきかえると
(左辺)
=x1b1+x2b2+…+xtbt
=x1(Σ[i=1..r]ai1ai)+x2(Σ[i=1..r]ai2ai)+…+xt(Σ[i=1..r]aitai)
=x1(a11a1+a21a2+…+ar1ar)+x2(a12a1+a22a2+…+ar2ar)+…
 +xt(a1ta1+a2ta2+…+artar)
となり、ai の係数は Σ[j=1..t]xjaij となる。そこで、
Σ[j=1..t]xjaij=0,  i=1, 2, …, r
となる非自明な xj が存在すればよく、t>r より xj の存在することが保証される。

定理1 とは「未知数の個数n が方程式の個数m をこえるとき、同次線形連立方程式は非自明な解をもつ」というもので、ここでは、未知数の個数が t 、方程式の個数が r であり、t>r であるため非自明な解が存在する。非自明な解が存在するということは、x1, x2, …, xt のうちの1つは 0 でない要素が存在する。つまり、ベクトルb1, b2, …, bt が線型従属であることが示され、生成系 a1, a2, …, ar は最大個数である r個のベクトルをもつ線型独立であることが示される。
以上のようにして r個より多い個数のベクトルは線形従属であるが、r個のベクトル a1, a2, …, ar は線形独立であるから、V の次元は r である。

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