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2019/12/03

『ガロア理論入門』第1章第4節の節末問題

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第4節の節末問題。問題4-1、4-2については以前に取り扱ったので、問題4-3から。問題4-3と問題4-4は問題文とはなっていないが、証明問題だろう。解答は載せない。
問題4-3 ベクトル空間 \( V \) において \( \boldsymbol{ a_1 }, \boldsymbol{ a_2 }, \cdots, \boldsymbol{ a_n } \) の中の線形独立なものの最大個数が \( r \) のとき
$$
\begin{eqnarray}
\boldsymbol{ b_1 } &=& a_{11} \boldsymbol{ a_1 } + a_{12} \boldsymbol{ a_2 } + \cdots + a_{1n} \boldsymbol{ a_n } \\
& & \cdots \cdots \cdots \cdots \\
\boldsymbol{ b_m } &=& a_{m1} \boldsymbol{ a_1 } + a_{m2} \boldsymbol{ a_2 } + \cdots + a_{mn} \boldsymbol{ a_n }
\end{eqnarray}
$$
によって \( \boldsymbol{ b_1 }, \cdots, \boldsymbol{ b_m } \) を定めると、 \( \boldsymbol{ b_1 }, \cdots, \boldsymbol{ b_m } \) の中の線形独立な最大個数は高々 \( r \) である。
問題4-4 ベクトル空間 \( V \) において \( \boldsymbol{ b_1 }, \boldsymbol{ b_2 }, \cdots, \boldsymbol{ b_m } \) が \( \boldsymbol{ a_1 }, \boldsymbol{ a_2 }, \cdots, \boldsymbol{ a_n } \) (ただし \( m \gt n \))の線形和であるとき、\( \boldsymbol{ b_1 }, \boldsymbol{ b_2 }, \cdots, \boldsymbol{ b_m } \) は線形従属である。
問題4-5 \( n \) 次元のベクトル空間 \( V \) において \( \boldsymbol{ a_1 }, \boldsymbol{ a_2 }, \cdots, \boldsymbol{ a_r } \ ( r \lt m ) \) が線形独立のとき、 \( \boldsymbol{ a_{ r+1 } }, \cdots, \boldsymbol{ a_n } \) を選んで \( \boldsymbol{ a_1 }, \boldsymbol{ a_2 }, \cdots, \boldsymbol{ a_n } \) が線形独立であるようにすることができる。これを証明せよ。
問題4-6 \( V \) を \( K \) 上の\( n \) 次元のベクトル空間とし、\( K^n \) を \( K \) 上の行ベクトル空間とする。\( V \) の線形独立な生成系 \( \boldsymbol{ a_1 }, \boldsymbol{ a_2 }, \cdots, \boldsymbol{ a_n } \) をとり、\( V \) の任意の要素 \( \boldsymbol{ a } \) を \( \boldsymbol{ a } = a_1 \boldsymbol{ a_1 } + a_2 \boldsymbol{ a_2 } + \cdots + a_n \boldsymbol{ a_n } \) と表わす。このとき、
$$
\varphi : V \to K^n , \qquad \boldsymbol{ a } \to ( a_1, a_2, \cdots, a_n )
$$
とすると、\( \varphi \) は一対一で \( K^n \) の上への写像であり
$$
\varphi ( \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} ) = \varphi ( \boldsymbol{a} ) + \varphi ( \boldsymbol{b} ),
\qquad \varphi ( a \boldsymbol{a} ) = a \varphi ( \boldsymbol{a} )
$$
をみたすことを証明せよ。

2019/11/17

ベクトルの従属性、独立性

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第4節に進む。第4節は「ベクトルの従属性、独立性」。内容は、線形従属・線形独立の説明、次元の定義、行列の階数など。わかっているのか、わかっていないのか、曖昧なところ。

まずは、線形従属・線形独立から。
体K 上のベクトル空間V において、ベクトル a1, a2, …, an線形従属であるとは、x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在することをいう。そうでないとき a1, a2, …, an線形独立という。
線形従属の説明を主としていたので、最初わかりにくく感じる。線形独立を主とした説明の方に慣れていたためであろう。たとえば次のようなものだ(結城浩『数学ガール/ガロア理論』より。ひとつ目の方は2次元での説明。)。
線型独立
V を《S 上の線型空間》として、v, w∈V および s, t∈S とする。
以下の条件が成り立つとき、ベクトルv とw は線型独立であるという。
sv+tw=0 ⇔ s=0 ∧ t=0
線型独立ではないとき、ベクトルv とw は線型従属であるという。
線型独立は一次独立、線型従属は一次従属ともいう。
線型独立(一般化)
V を《S 上の線型空間》として、vk∈V および sk∈S とする(k=1, 2, 3, …, m)。以下が成り立つとき、ベクトル v1, v2, …, vm線型独立であるという。
s1v1+s2v2+…+smvm=0 ⇔ s1=0 ∧ s2=0 ∧ … ∧ sm=0
成り立たないとき、ベクトル v1, v2, …, vm線型従属であるという。
『数学ガール/ガロア理論』での書き方で、『ガロア理論入門』での内容を書くと、次のようになる。
線型従属
V を《S 上の線型空間》として、vk∈V および sk∈S とする(k=1, 2, 3, …, m)。以下が成り立つとき、ベクトル v1, v2, …, vm線型従属であるという。
s1v1+s2v2+…+smvm=0 ⇔ s1≠0 ∨ s2≠0 ∨ … ∨ sm≠0
成り立たないとき、ベクトル v1, v2, …, vm線型独立であるという。
覚えるには線型独立を主として覚えた方がわかりやすいが、使うにはどちらも理解しておいたほうがいい。

2次元での線型独立については、テストや試験によく出ていたように思う。『数学ガール/ガロア理論』での例を見てそう思った。
V を S 上の線型空間と見なすとき、ベクトルv とw が線型独立であることは次のようにして表せる。
sv+tw=0 ⇔ s=0 ∧ t=0 (s, t∈S)
座標空間を R 上の線型空間と見なすとき、ベクトルexey が線型独立であることは次のようにして表せる。
axex+ayey=0 ⇔ ax=0 ∧ ay=0 (ax, ay∈R)
C を R 上の線型空間と見なすとき、線型独立の条件は、実数と複素数の基本的な命題として登場する。
a+bi=0 ⇔ a=0 ∧ b=0 (a, b∈R)
Q(√2) を Q 上の線型空間と見なすとき、線型独立の条件はこうだ。
p+q√2=0 ⇔ p=0 ∧ q=0 (p, q∈Q)
もちろん(?)僕は、線型空間として意識して使っていたわけではない。ただ、こんなものだとしていただけである。

2019/11/14

ベクトルとスカラーと余談

エミール・アルティン『ガロア理論入門』での(左)ベクトル空間の定義を再度確認しよう。
V を加群とし、その要素を a, b, で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。
  1.  a(ab)=aa+ab
  2.  (a+b)a=aa+ba
  3.  a(ba)=(ab)a
  4.  1aa
ところで、ベクトル空間は線型空間とも呼ばれる。結城浩『数学ガール/ガロア理論』に、線型空間の公理が載っていたので比べてみよう。
線型空間の公理
アーベル群V と体S が以下の公理を満たすとき、
V を《S 上の線型空間》という。
ただし、v, w は V の任意の元、s, t は S の任意の元とする。

VS1 sv は V の要素になる。(ベクトルのスカラー倍)
VS2 s(v+w)=sv+sw が成り立つ。(スカラー倍の分配法則)
VS3 (s+t)v=sv+tv が成り立つ。(ベクトルの分配法則)
(左辺の+はスカラーの和、右辺の+はベクトルの和)
VS4 (st)v=s(tv) が成り立つ。(スカラー倍の結合法則)
VS5 1v=v が成り立つ。
『ガロア理論入門』の方では左ベクトル空間と右ベクトル空間を区別している点と、記号が異なる点を除けば、同じことを言っている。『数学ガール/ガロア理論』での定義(公理)には VS1 というような番号がふってあるが、これはおそらく vector space の略である(もしかすると、vector と scalar かもしれない)。

ベクトル(vector)とスカラー(scalar)という用語が出てきたので、確認しておこう。V が S 上の線型空間のとき、アーベル群V の元のことをベクトルと呼び、体S の元のことをスカラーと呼ぶ(『数学ガール/ガロア理論』の方での記述)。元とは集合の要素のこと。

なお、『ガロア理論入門』の方では「線形(代数)」、『数学ガール/ガロア理論』の方では「線型」と、漢字が違っているが、同じものを指している(古くは線形、最近は線型と書かれていることが多い)。

普段、ベクトル空間を意識することは少ないが、数学ではしらずしらずのうちに使っている。たとえば、座標平面。座標平面を《R 上の線型空間》と見なすことができる(R は実数全体の集合)。座標平面上の点を位置ベクトルと呼ぶこともある。またたとえば、複素数。複素数全体の集合C をベクトルの集合、実数全体の集合R をスカラーの集合として、C は《R 上の線型空間》と見なすことができる。

ベクトル空間(線型空間)の話は、読んだり聞いたりすると納得できるのだが、自ら説明するとなるとまだ自信がないというのが正直なところである。このあと、線形独立や線型従属、そして次元の話が出てくるので、もう少ししっかりと理解しておきたいところである。


ところで、関係ないかもしれないが、ベクトルとスカラーの話を聞くと、僕は単位のことを思い出す。

子供のころ、100円玉が4枚あったら、100(円)✕4(枚)=400(円)となるが、なんで400(枚)とならないのか、物理的に100円玉が4枚だし、感覚的にももちろん400円と思うのだが、400枚としない理屈みたいなものがわからなかった。もし、1円玉を100枚持っている人が4人いたら、100(円 or 枚)✕4(人)=400(円 or 枚)だから「枚」が答えに出ないというわけではない。しかしここでも400(人)とはならない(していない)。メートル(m)とメートル(m)を掛けたら平方メートル(m2)となるのに、(円)と(枚)を掛けて(円枚)という単位にはならない。

僕たちは日常の計算で自然に単位を考えている。それが不思議だった。そして、すごいことだと思う。

100(円)✕4(枚)=400(円)のたとえでいうと、100(円)はベクトル、4(枚)はスカラー、400(円)はベクトルである。ベクトルのスカラー倍はベクトルである。基本的には枚数には自然数となる。ひょっとすると「環上の加群」とはこんなことを考えているのではないか……と、これは妄想である。たぶん、このような単位の計算とベクトル・スカラーの話とはつながっていると思うが、しっかりと説明できるほど結びついてはいない。

2019/11/12

ベクトル空間の問題

エミール・アルティン『ガロア理論入門』の第1章第2節の問題。
問題2-1 体K 上のベクトル空間V において
(1) a00、(-1)a=-a を証明せよ。
(2) aa0 ならば a=0 または a0 であることを証明せよ。
ベクトル空間(左ベクトル空間)の定義は以下。
V を加群とし、その要素を a, b, で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。
  1.  a(ab)=aa+ab
  2.  (a+b)a=aa+ba
  3.  a(ba)=(ab)a
  4.  1aa
前回、0a0 の証明があったので、それも見ておく。
aa=(a+0)a=aa+0a
∴0a0

まずは問題2-1の(1) a00 について。僕の解答。
aa=a(a+0)=aa+a0
∴a00
本での解答は以下。
a0=a(0+0)=a0+a0 から a00
これはOKだろう。

続いて、(-1)a=-a について。少し工夫が必要そうだ。文字式に慣れていると当たり前のことのように思うが、ここでわかっていることは、空間ベクトルの定義(公理)だけである。それとこれまでに証明した 0a0、a00 は使える。

(-1)a=-a の左辺 (-1)a は、V の要素 aa として定義されているかたちだ。では、右辺の -a はどうだろう。難しく考えすぎだろうか。本の解答を見る。
a+(-1)a={1+(-1)}a=0a0 から (-1)a=-a
なるほど、a の属する V は加群、つまり、加算に関する可換群なので、a の逆元 -a が存在することを利用したのだろう。

次は問題2-1の(2)、aa0 ならば a=0 または a0 であることの証明。a=0 ならば 0a0、そして、a0 ならば a00 はここまでに証明したことにある。今回はその逆の証明だ。さて、どうする。

思いつかず、解答を見る。
aa0 で a≠0 とすると、K の中に a-1 が存在する。
a-1(aa)=(a-1a)a=1aa,  a-100
から a0 となる。
なるほど、今度は K の中に、乗算に関して0以外の要素に逆元a-1 が存在することを利用したのか。

普段(とはいってもほとんどない、が)は文字式の計算を何気なくしているが、当たり前にしていることを証明するのはなかなか難しい。

2019/11/11

ベクトル空間

さて、やっと次に移ろう。エミール・アルティン『ガロア理論入門』の第1章「線形代数」の第2節「ベクトル空間」である。内容はベクトル空間の定義についての説明だ。
V を加群とし、その要素を a, b, で表わす。また K を体とし、その要素を a, b, … で表わす。このとき K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて、次の条件が満たされているならば、V を K 上の左ベクトル空間という。
  1.  a(ab)=aa+ab
  2.  (a+b)a=aa+ba
  3.  a(ba)=(ab)a
  4.  1aa
このブログではわかりにくいかもしれないが、V の要素は太字のアルファベットで記載されている。

まず「加群」について。漢字からは「加法に関する群」であろうと予想はできるが、念のためインターネットで調べてみる。「加群」で検索すると、「環上の加群」という用語がたくさんヒットした。環上の「環」は、おそらく整数環などの「環」であろう。「体」上ではなく「環」上での加群ということも考えられているということを知る。「環上の加群」についても、いつか勉強するかもしれない。いまのところは、先に進もう。

予想はほぼ当たっていて、加群とは、加法に関する可換群(アーベル群)のことであった。

ベクトルといえば、アルファベットの上に矢印が書かれたものを思い出す。x のような記号だ。太字のアルファベットは矢印をつけたものと同じような意味をもつと考えてもいいだろう。ベクトルがどのような意味なのかあまりわかっていないが、ここは定義であるので、まずは受け入れよう。

「左ベクトル空間」の「左」は、V の任意の要素 a に、K の任意の要素 a を左から掛けているから「左ベクトル空間」である。右から掛ける、つまり、aa が定義され、同様の条件が満たされていた場合には「右ベクトル空間」と呼ばれる。「左ベクトル空間」と「右ベクトル空間」に分けているのは、有理数同士や実数同士ならば左から掛けても右から掛けてもその演算結果は同じ、つまり交換法則が成り立つが、一般的な群や体を考える場合には交換法則が成り立たない場合もあるからである。『ガロア理論入門』では、「このあと、左ベクトル空間と右ベクトル空間を同時に扱うことはないので、左、右をつけないで単にベクトル空間とよぶことにしよう」としている。

さて、ベクトル空間の定義のあと、以下のことが書かれてあった。
V を K 上の左ベクトル空間とし、0 と 0 をそれぞれ K と V の零とするとき、
0a0、  a00
がなりたつことが容易に確かめられる。たとえばはじめの式は、次の等式から導くことができる。
aa=(a+0)a=aa+0a
はじめの式とは、0a0 のことである。0a0 を導いたやり方を丁寧に書いてみます(イコールの位置などそろえておらず、すみません)。
aa
=(a+0)a
=aa+0a
上の最初、1行目の aa は、「K の任意の要素 a と V の任意の要素 a に対し V の要素 aa が定義されていて」と、すでに定義されているもの。2行目では、その a を a+0 としている。a は体K の要素で、体では加法が定義され、零元(単位元)があるので、a=a+0 である。そして3行目は、2行目の式に空間ベクトルの条件のひとつ、(a+b)a=aa+ba を使っている。1行目と3行目をつなげると、aa=aa+0a で、右辺の 0a が、0a0 でなければならない。

与えられた定義(公理)や(すでに証明された)定理から新たな定理を導くことが証明である。

では、この節の問題を見てみよう。
問題2-1 体K 上のベクトル空間V において
(1) a00、(-1)a=-a を証明せよ。
(2) aa0 ならば a=0 または a0 であることを証明せよ。

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