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2019/11/16

【定理1】未知数の個数が方程式の個数をこえるとき、同次線形連立方程式は非自明な解をもつ

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第3節は、同次線形連立方程式についてである。同次線形連立方程式の説明に次いで、定理1として次の定理とその証明が載っていた。
定理1
未知数の個数n が方程式の個数m をこえるとき、同次線形連立方程式は非自明な解をもつ。
連立方程式を習ったときだと思うが、未知数が2つ(たとえばx, y)あるのに、方程式が1つだったら、x, y は求められない(不定となる)ということを聞いた。そのときに証明があったのかどうかは覚えていない。ただ、そうなんだ、というくらいにしか頭に残っていない。

ここで述べられている定理は、その(同次線形連立方程式での)一般化の証明である。
a11x1+a12x2+…+a1nxn=0
a21x1+a22x2+…+a2nxn=0
 …………
am1x1+am2x2+…+amnxn=0
その証明をそのまま書くとただの丸写しになるので、概略だけを残しておこう。

証明には数学的帰納法が用いられていた。

数学的帰納法は簡単に書くと、次のような証明の方法である。自然数n について、証明したい命題を P(n) として、
  1. P(1) が正しいことを証明する
  2. P(k) が正しいと仮定すれば、P(k+1) も正しくなることを証明する
というやり方である。よく「ドミノ倒し」のような証明方法といわれている。

定理1の証明では、まず「n>0個の未知数に対して方程式が1つもないとき」に非自明な解が存在することを証明し、次に k<m として「k個より多い未知数をもち、k個の式からなる任意の同次線形連立方程式が非自明な解をもつ」と仮定して進めていた。

式ai1x1+ai2x2+…+ainxn を Li, i=1, 2, …, m とすると、与えられた連立方程式は以下のように書ける。
L1=L2=…=Lm=0
もしすべての i, j に対して aij=0 であれば、x1, x2, …, xn の任意の値が解になる(非自明な解が存在する)。

aij が全部は 0 でないときは、a11≠0 と仮定できる(方程式の順序や未知数の番号を変えたとしても、非自明な解が存在するか否かに影響しないから)。

与えられた連立方程式に非自明な解が存在するための条件は、次の連立方程式が非自明な解をもつことである。
L1=0
L2-a21a11-1L1=0
 …………
Lm-am1a11-1L1=0
ちょっと添字が多くて見にくいかもしれないが、たとえば上の2番目の方程式は、L1=0 の両辺に a21/a11 を掛けたものを、L2=0 から引いたものである。連立方程式を解くときに式に①、②と番号をつけて、「①-②✕2 より」としているようなもので、x1 の係数をそろえるために a21/a11 を掛けている(ここでは a11≠0 である)。

この2番目以下の式を m-1個の同次線形連立方程式とみれば、帰納法の仮定より、非自明な解が存在する(ここでは、未知数 n個で、m-1個(m-1<m)の式だから)。

2019/11/15

同次線形連立方程式

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第3節は、同次線形連立方程式についてである。
体K において mn個の要素
aij、  i=1, 2, …, m、 j=1, 2, …, n
が与えられたとき、次の連立方程式の K における解xiを考える。
a11x1+a12x2+…+a1nxn=0
a21x1+a22x2+…+a2nxn=0

am1x1+am2x2+…+amnxn=0
このように右辺が 0 の連立方程式を同次線形連立方程式という。x1=0, …, xn=0 は解であり、これを自明な解といい、x1, x2, …, xn の中に 0 でないものが存在するとき、この解を非自明な解という。
文字が多い……。が、怖気づいてはいけない(と、自分に言い聞かせる)。

同次線形連立方程式という言葉は、この本で初めて見た。学校の授業では学んでいない(と思う)。同次線形連立方程式の「同次」とは、未知数の次数が同じという意味かと思ったが、のちに「非同次線形連立方程式」というのが出てきて、そのときの未知数の次数も同じであったので、違うようだ。同次線形連立方程式と非同次線形連立方程式の違いは、上にも書かれている通り、右辺が 0 であるか、0 でないかの違いだった。

「同次」の意味はちょっと飛ばして、「線形」は、線形代数や線形空間の線形であろう。非常にざっくりとしたイメージだが、線形は足し算というイメージがある。複素数を a+bi と表現したり、ベクトルを aa+ab で表現したりするが、このような形を線形結合と呼んだりする。

そして「連立方程式」は、方程式が連立しているもの。上の同次線形連立方程式は、一般化されているので文字が多い。それだけだ(と、自分に言い聞かせる)。

m は方程式の数、n は未知数の数を表しているといえるだろう。aij の添字のi は何番目の方程式か、j はその方程式の何番目の項か(どの未知数の係数か)を表している。

ともかく、このような形の連立方程式を同次線形連立方程式という。

そして、同次線形連立方程式では、x1=0, …, xn=0 は自明な解であり、x1, x2, …, xn の中に 0 でないものが存在するとき、その解を非自明な解という。

いきなり一般化された形で説明されても、これまでにしっかりと数学を学んできた人にはわかるのだろうが、なかなかイメージできない。なので、わかる範囲での具体例を挙げて確認してみよう。例に挙げるのは、(たしか)中学校で習った連立方程式だ。

親しみのある連立方程式は、2つの未知数 x, y を使った、2つの方程式を並べたものだ。{(中括弧)で2つの方程式をくくらなければならないのかもしれないが、ブログで書くのは面倒くさそうだし、上の同次線形連立方程式もくくっていないので、なしとする。適当に例を作って、
x+2y=0
3x+4y=0
の連立方程式で考えてみる。

なるほど、自明な解というのがよくわかる。(x, y)=(0, 0)というのは、2つの方程式の右辺が 0 であることより明らかだ。だから自明な解なのか。

一方、非自明な解というのはどうか。実際にこの例の連立方程式を解くと、解は(x, y)=(0, 0) しか存在しないので、この例では非自明な解は存在しないといえる。

では、非自明な解が存在するときはどんなときだろう。

話は飛ぶが、連立方程式の解は、それぞれの方程式を1次関数の直線と見なしたときに、2直線の交点と見ることができることを学んだとき、ちょっとした感動だった。ここで例に挙げた連立方程式は、原点(0, 0)で交わる直線と見ることができる。

そう思ってあらためて方程式を見ると、ax+by=0 という形は、y=(a/b)x (ただし b≠0 のとき)と式変形できて、原点を通る直線であると見なせる。とすると、このような形の連立方程式で非自明な解があるとすれば、
x+2y=0
2x+4y=0
のような連立方程式である。

見た瞬間にわかるように、1つめの式の両辺を2倍したものが2つめの式であり、両者は同じものを指している。こういったとき解は「不定」だったか。幾何のイメージにたよってしまうが、直線上の点はすべて解になる。

同次線形連立方程式における非自明な解とは、このような解ではないか、と想像しながら、次に進んでいく。

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