2019/11/23

線形独立、次元、生成系

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第1章第4節。

定理2 の証明のあとに「注意」として、n次元ベクトル空間の n個の線形独立なベクトル a1, a2, …, an は一組の生成系であることが示されている。その説明が以下である。
まず、任意のベクトル a に対して n次元空間の n+1個のベクトル a, a1, a2, …, an は線形従属であり、その従属性を示す式において a の係数は 0 でない。そこでこれを a について解くことにより、a, a1, a2, …, an の線形和として表わされ a1, a2, …, an が生成系であることがわかる。
本文では次に、部分空間の説明に入るが、線形独立や次元について確認のために、ここで節末問題の4-1、2を取り上げておこう。解答は省略する。
問題4-1
(1) a1, a2, …, an が線形独立であるための必要十分条件は、このうちどれをとっても他の線形和に等しくないことである。
(2) a1, a2, …, an が線形従属であるための必要十分条件は、このうちの適当な1つが他の線形和に等しいことである。
これを証明せよ。

問題4-2
n次元ベクトル空間V において、次の(1), (2)は同値であることを示せ。
(1) a1, a2, …, an は線形独立である。
(2) a1, a2, …, an は V の生成系である。
ここまでをまとめる(箇条書き)と、次のようになる。

体K 上のベクトル空間V において、
ベクトル a1, a2, …, an線形独立であるとは、
  • x1a1+x2a2+…+xnan=0 ⇔ x1=0 ∧ x2=0 ∧ … ∧ xn=0
  • a1, a2, …, an のうちどれをとっても他の線形和に等しくない
ベクトル a1, a2, …, an線形従属であるとは、
  • x1a1+x2a2+…+xnan=0 で、x1, x2, …, xn のうちの少なくとも1つは 0 でないような K の要素 x1, x2, …, xn が存在する
  • a1, a2, …, an のうちの適当な1つが他の線形和に等しい
V の中で線形独立なベクトルの最大個数を、体K 上のベクトル空間V の次元という。
  • V の中に任意個数の線形独立なベクトルが存在するならば次元は無限大である。
  • V の中に n個の線形独立なベクトルが存在し、n個より多くのベクトルは必ず線形従属になっているとき、V の次元は n である。
V の要素の列 a1, a2, …, am が V の生成系であるとは、
  • V の任意の要素 a が K の適当な要素 ai, i=1, 2, …, m を用いて a1, a2, …, am の線型和 a=Σ [i=1..m] aiai で表わすことができる
V が一組の生成系 a1, a2, …, am をもつとき、この生成系の中に含まれる線形独立なベクトルの最大個数が V の次元である。
n次元ベクトル空間V において、
a1, a2, …, an は線形独立である ⇔ a1, a2, …, an は V の生成系である

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