ラベル 有限体 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 有限体 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019/12/07

第2章第2節の節末問題(問題2-2解答)

エミール・アルティン『ガロア理論入門』第2章第2節の節末問題。問題2-2の解答です。
問題2-2 第1章、問題1-3で扱った可換体 \( Z_p \) において \( p=7 \) にとる。体 \( Z_7 \) において、次の各方程式を満足する要素を求めよ。
(1) \( 3x=4 \)
(2) \( x^2 + x + 1 = 0 \)
(3) \( x^2 -3 = 0 \)
第1章第1節の問題1-3は以下。
問題1-3 \( p \) を素数とし、
\( Z_p = \{ 0, 1, 2, \cdots, p-1 \} \)
とする。\( a \in Z_p, \ b \in Z_p \) のとき、\( a \oplus b, \ a \circ b \) をそれぞれ \( a + b, \ ab \) を \( p \) で割ったときの余り、と定める。すると集合 \( Z_p \) は演算 \( \oplus, \ \circ \) のもとで可換体であることを示せ。
問題1-3については以前に書きましたので、必要でしたらそちらをご確認ください(「一次不定方程式の整数解(問題1-3より)」「引き続き、問題1-3より」)。

問題2-2の体 \( Z_7 \) は有限体 \( \mathbb {F} _7 \) です。要素を列挙すると以下となります。
\( \mathbb {F} _7 = Z_7 = \{ 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6 \} \)
要素が7つしかありませんので、1つずつ確認していけば答えは出せますので問題2-2の解答は載せません。ただ本に掲載されていた解答は求め方の工夫がなされていました。

以前に演算表をつくりましたのでそれも載せておきます。


2019/11/08

整数環と剰余環

整数全体の集合は割り算(除法、除算)に関して閉じていない。

整数同士の足し算の結果は整数になる。整数同士の引き算も整数、整数同士の掛け算も整数になる。集合の要素同士の演算結果がその集合の中にあることを閉じていると表現する。整数全体の集合は、加法・減法・乗法に関しては閉じているが、除法に関しては閉じていない。
演算の定義(演算に関して閉じている)
集合Gが演算★に関して閉じているとは、集合Gの任意の要素 a, b に関して、以下が成り立つこと。
a★b∈G
整数全体の集合ではなく、有理数全体の集合とすると、除法に関しても閉じている。

「環」というのは以下のようなものである(厳密には「乗法の単位元が存在する可換環」)。
環の定義(環の公理)
以下の公理を満たす集合をと呼ぶ。
  • 演算+(加法)に関して――
    • 閉じている
    • 単位元が存在する(0と呼ぶ)
    • すべての要素について結合法則が成り立つ
    • すべての要素について交換法則が成り立つ
    • すべての要素について逆元が存在する
  • 演算×(乗法)に関して――
    • 閉じている
    • 単位元が存在する(1と呼ぶ)
    • すべての要素について結合法則が成り立つ
    • すべての要素について交換法則が成り立つ
  • 演算+と×に関して――
    • すべての要素について分配法則が成り立つ
整数を抽象化して環という概念をつくったのか、それとも環という概念ができてから整数にも当てはまったのか、歴史的な事情は知らない。ともかく、整数全体の集合は、加法と乗法に関して環になる。整数環という。

定義のなかには減法についての記述がないが、加法と加法に関する逆元があれば減法ができる。除法についても、乗法と乗法に関する逆元があれば除法は可能だか、整数全体の集合のなかには逆元が存在しない。
逆元の定義(逆元の公理)
aを集合Gの要素とし、eを単位元とする。aに対して、以下の式を満たすb∈Gを、演算★に関するaの逆元と呼ぶ。
a★b=b★a=e
整数ではなく、有理数全体の集合とすると、乗法に関する逆元が存在するので、除法が可能である。有理数全体の集合には「環」ではなく「体」という名前がついている(「体の定義」参照)。「体」と「環」の違いは、乗法に関する逆元が存在するかしないかの違いである。

整数全体の集合はよくZで表される。要素の数は無限である。
Z={…, -2, -1, 0, 1, 2, …}

整数を 2 で割った余りを見ると、割り切れて余りが 0 になるか、1 になるかのどちらかである。2 で割り切れる整数には偶数、1 余る数には奇数という名前がついている。整数を 2 で割った余りを集合として、
Z/2Z={0, 1}
と書く。3 で割った余りならば、余りは 0 か 1 か 2 になるので、
Z/3Z={0, 1, 2}
と書ける。

一般に、ある数 m(整数)で割った余りの集合を、
Z/mZ={0, 1, 2, …, m-1}
と書くことができる。集合Z/mZ には剰余環という名前がついている。加法、乗法を mod m で考えれば環となるからである。整数環の要素数が無限であったのに対して、剰余環は有限の要素数である。

この m が素数であるとき、集合Z/mZ を体と見なすことができる。p を素数とすると、集合Z/pZ は体となり、有限体Fpと呼ばれる。

2019/11/06

有限体と剰余環

引き続き、エミール・アルティン『ガロア理論入門』の問題1-4より、有限体について考えます。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
前回、問題文中にあるxq=xというのはフェルマーの小定理のことではないか、ということを書きました。
フェルマーの小定理
p が素数,a が任意の自然数のとき
ap ≡ a mod p
特に p が素数で,a が p と互いに素な自然数のとき
ap−1 ≡ 1 mod p
前回の例で挙げていたのは有限体Fp(=素数 p を法とする剰余環 Z/pZ)で、乗法の演算として mod を使ったものでしたので、フェルマーの小定理が出てきてもおかしくはありません。

次なる疑問は、有限個の要素からなる体であれば、その有限体は、素数 p を法とする剰余環であるかどうかです。

そこで思い出されるのが、問題1-3です。
問題1-3
p を素数とし、
Zp= {0, 1, 2, …, p-1}
とする。a∈Zp、b∈Zp のとき、a⊕b、a○b をそれぞれ a+b、ab を p で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
(解答)
体の条件のうちの大部分は簡単に示せるので省略する。a≠0 のとき a○b=1 となる b の存在を示す。a は 1, 2, …, p-1 のどれかであるから、p と互いに素である。よって ax+py=1 となるような整数x, yが存在する。このとき x=pq+r (0≦r<p) のような q, r をとると、
apq + ar + py = 1  ∴ar = p (- aq - y) + 1
よって ar を p で割った余りは 1 であり、r∈Zp であるから a○r=1。この r を b にとればよい。
集合 Zp が、p が素数であるときには、演算⊕、○のもとで可換体である、ということが問題となっています。

仮に、素数でない数(たとえば 4)で見てみましょう。Z4={0, 1, 2, 3}を考えます。

Z4における、a⊕b、a○b の演算表は以下のようになります(演算表では⊕、○ではなく、+、✕と書いています)。

注目してほしいのは、乗法の演算表で、掛け算の九九での言い方を借りると、2 の段のところです(黄色で目立たせています)。以前、有限体F2、F3、F5、F7の演算表を挙げましたが、それらの演算表と比べてみるとわかりやすいかもしれません。

集合 Z4 の要素である 2 を使った掛け算(mod)の演算結果は、0 と 2 だけで、1 と 3 は現れません。
2✕0=0 ⇒ 4 で割った余りは 0
2✕1=2 ⇒ 4 で割った余りは 2
2✕2=4 ⇒ 4 で割った余りは 0
2✕3=6 ⇒ 4 で割った余りは 2
特に 1 が現れないというのが重要で、1 が現れないということは、2 に対する逆元が存在しないということになります。つまり、集合 Z4 は体の定義から外れる、体ではないということになります。

0 と 正の整数全体からなる集合をZとすると、集合Zの要素の数は無限になります。問題1-3における集合 Zp は、集合Zに p-1 という上限(この言い方が適切かどうかはわかりません)をつけて有限とした集合です。このとき、p が素数であるときに、mod での加法・乗法に関して Zp は体(可換体)と見なすことができます。

集合Z自体も、逆元をもたないため、体とは言えません。しかし、p-1 という上限をつけて有限とし(これはつまり、要素数を p 個としたということです)、演算を mod p での加法・乗法とすると、問題1-3の解答にあるように、p が素数であるときの集合 Zp の(0を除く)全ての要素が逆元を持ち、体と見なせます。

長くなってきたので、詳しい定義などは書きませんが、整数全体の集合Z(上と同じ記号を使ってすみません)は、体ではなく「環(整数環)」という名前がついています。そして整数環Z(無限の要素数)を有限(m 個)にして、mod m での演算として考えたものを剰余環 Z/mZ といいます。そして、その剰余環Z/mZ で m が素数のとき、有限体として見なすことができるのです。

問題1-3では、剰余環 Z/mZ で m が素数のときには有限体になること、問題1-4では、有限体であれば、素数 p を法とした剰余環 Z/pZ であることを言っているように思えます。

問題1-4については、ひとまずここまでとしたいと思います。

引き続き有限体Fpについて(フェルマーの小定理)

前回具体例として挙げた、有限体F2、F3、F5、F7で、問題と解説にあった内容を確認したいと思います。任意の要素ということなので、まずは全ての要素についてxq=xを確認していきます。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。

2={0, 1}
02=0
12=1
3={0, 1, 2}
03=0
13=1
23=2 (mod 3)
5={0, 1, 2, 3, 4}
05=0
15=1
25=2 (mod 5)
35=3 (mod 5)
45=4 (mod 5)
7{0, 1, 2, 3, 4, 5, 6}
07=0
17=1
27=2 (mod 7)
37=3 (mod 7)
47=4 (mod 7)
57=5 (mod 7)
67=6 (mod 7)
確かに、有限体F2、F3、F5、F7において、任意の要素xq=xを満たします。mod の性質が絡んでいるようですね。

そこで、mod に関する定理とかに何かxq=xのようなものはないかと探したところ、「フェルマーの小定理」が見つかりました(参考:高校数学の美しい物語「フェルマーの小定理の証明と例題」)。
フェルマーの小定理:
p が素数,a が任意の自然数のとき
ap ≡ a mod p
特に p が素数で,a が p と互いに素な自然数のとき
ap−1 ≡ 1 mod p
あ、先の要素ごとの計算、書き方まずかったですかね。mod では「=(イコール、等号)」ではなく「≡」を使います。「≡」は何と読むか知りませんが、"合同(ごうどう)"と入力して変換すると出てきます。等号(=)を使った式を等式といいますが、合同(≡)を使った式を合同式といいます。

フェルマーの小定理の証明は、参考したサイトに掲載されているので、ここでは省略。

有限体F2、F3、F5、F7について、xq=xを具体的に確認しましたが、これは 7 より大きな素数での有限体Fpにもあてはまります。

問題1-4の「有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはxq=xを満たす」ということは、「有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xはフェルマーの小定理を満たす」とも言えそうです。

ということは、有限個の要素からなる体は、有限体Fp、つまり素数 p を法とした剰余環 Z/pZ となる、ということを言っているのかもしれません。

有限体Fpについて考える

前回までのあらすじ)
『数学ガール/ガロア理論』を読んで「ガロア理論」に興味を持った僕は、古本屋で『ガロア理論入門』を見つけたので読みはじめた。しかし、文系の僕にとっては「入門」と言えどレベルが高く、読むのに四苦八苦。「数学ガール」シリーズをはじめ、数学読み物やWeb検索で勉強しつつ、なんとか『ガロア理論入門』の内容を理解しようとする。『ガロア理論入門』の各節には練習問題がついていて、現在取り組んでいる問題は、有限体に関する問題だった。

と、ちょっと物語風にこれまでのところをまとめてみました。

現在取り組んでいる問題と解答は次のものです(エミール・アルティン『ガロア理論入門』)。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xは xq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
(解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。
解答を読んでもよくわからないため、具体的に有限体の例を使って、問題と解答に書かれていることを確認していきたいと思います。

僕の知っている有限体は、結城浩『数学ガール/フェルマーの最終定理』に出てきた、有限体Fpしか知りません。そこで、まずは有限体Fpを例に、問題と解答の理解につなげたいと思います。「数学ガール」でいうところの《例示は理解の試金石》です。

有限体とは、有限個の要素からなる体です。体の定義はここでは省略します。これから考えていく有限体Fpは、素数pを法とした剰余環Z/pZです。
p=Z/pZ={0, 1, 2, …, p-1}
加法と乗法を mod p(pで割った剰余)で考えます。(環、整数環、剰余環、mod についてもどこかでまとめておきたいですが、ここでは省略します。)

まずは、有限体Fpをいくつか挙げ、それらの演算表をつくります。
2=Z/2Z={0, 1}
3=Z/3Z={0, 1, 2}
5=Z/5Z={0, 1, 2, 3, 4}
7=Z/7Z={0, 1, 2, 3, 4, 5, 6}
素数は無限に存在しますので、有限体Fpの全てを挙げることはできません。ひとまずF7までで。

有限体F2とF3の演算表

有限体F5の演算表

有限体F7の演算表

2019/11/05

『ガロア理論入門』問題1-4より

歩みは遅いですが、エミール・アルティン『ガロア理論入門』の問題1-4です。
問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体Kがq個の要素をもてば、Kの任意の要素xは xq=xを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。
……わからないので解答を見ます。

ただし、解答を見てもわかりません。
(問題1-4解答)
0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる。よってx≠0のときxq-1=1。よってxq=x。x=0もこれを満たす。

「0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる」はわかります。有限体Kはq個の要素をもっていて、そのなかのひとつが0。体であるため、体の定義から、0を除くq-1個の要素は乗法に関して群をなします。位数というのは群の要素の個数と考えていい。だから、「0を除くq-1個の要素は乗法に関して位数がq-1の群をつくる」はわかります。

わからないのは、次の「よってx≠0のときxq-1=1」です。そのあとの「よってxq=x。x=0もこれを満たす」は、xq-1=1が成り立てば、この式の両辺にxを掛けてxq=xが導けるし、xq=xにx=0を代入しても式は成り立ちますので理解できます。

なので、まず理解したいことは、「乗法に関して位数がq-1の群 ⇒ xq-1=1」ということです。群論を勉強すれば、このような定理が見つかるのかもしれないが、あいにくと群論の教科書といったものは手元にありません。Wikipediaとかに載っているのかもしれませんが、専門用語が多すぎて、敬遠してしまいます。

ただし、結城浩さんの『数学ガール/ガロア理論』や『数学ガール/フェルマーの最終定理』に、群や体のことがある程度載っていて、その他数学の読み物ならばちらほら手元にありますので、まずはそれらから考えられるところをまずは自分で考えてみたいと思います。

さて、問題に戻って、問題(と、解答)を理解するために、具体例から考えてみましょう。あいにくと(というか逆にラッキーなことに)有限体の例が『数学ガール/フェルマーの最終定理』に載っています。問題1-3でも触れた、素数を法とした剰余環を体と見なした有限体Fpです。有限体の種類は他にもあるのかもしれませんが、まずはわかる範囲での具体例から、問題と解答の内容について確認していきたいと思います。

なかなか先に進めませんが、少しずつ進めていきます。

ちなみに『数学ガール/ガロア理論』の「参考文献と読書案内」に、アルティンの『ガロア理論入門』の紹介が載っていたので、記しておきます。
エミール・アルティンが線型代数の理論を用いてガロア理論を再整理した数学書です。章ごとの概要や解答付きの練習問題を訳者が付記しているので自習にも向いています。また、巻末の佐武一郎による解説では、ガロア理論の要諦が数ページにまとめられています。

ついでながら、現在私がガロア理論について学んでいる本は、
  • 結城浩『数学ガール/ガロア理論』(ソフトバンク クリエイティブ株式会社)
  • エミール・アルティン『ガロア理論入門』(ちくま学芸文庫)
  • 中村享『ガロアの群論』(講談社ブルーバックス)
の3冊です。『ガロア理論入門』を少し難しい読み物だと思ったのが、間違いとは言わないまでも、甘かったです……。

2019/11/04

一次不定方程式の整数解(問題1-3より)

あらためて、エミール・アルティン『ガロア理論入門』問題1-3についてです。
問題1-3 p を素数とし、
Zp = {0, 1, 2, …, p-1}
とする。aZpbZp のとき、abab をそれぞれ a + babp で割ったときの余り、と定める。すると集合 Zp は演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。
先に、本にある解答を載せておきます。
体の条件のうちの大部分は簡単に示せるので省略する。a ≠ 0 のとき ab = 1 となる b の存在を示す。a は 1, 2, …, p-1 のどれかであるから、p と互いに素である。よって ax + py = 1 となるような整数 x, y が存在する。このとき x = pq + r (0≦rp) のような q, r をとると、
apq + ar + py = 1  ∴ar = p (- aq - y) + 1
よって arp で割った余りは 1 であり、rZp であるから ar = 1。この rb にとればよい。
大部分が省略されています……。

ひとまず解答にある内容を確認すると、演算○についての逆元があるかどうかをチェックしています。

「よって ax + py = 1 となるような整数 x, y が存在する」という部分がわからなかったので調べたのですが、ap が互いに素であれば、ax + py = 1 となるような整数 x, y が存在するというのは高校範囲の数学で勉強しているようです……。

高校数学の美しい物語「一次不定方程式ax+by=cの整数解」に、「 ax+by=1 が整数解を持つ ⟺ a と b が互いに素」の証明が載っているのですが、ここでやっている証明、いま取り組んでいる問題1-3と絡んでいるようです。特に「a と b が互いに素」ならば「 ax+by=1 が整数解を持つ」という証明の方が。

「a と b が互いに素 ⇒ ax+by=1 が整数解を持つ」の証明
a と b が互いに素なとき a, 2a, 3a, ⋯, (b−1)a を b で割った余りは全て異なる(※)ので,余りが1となるようなものが存在する。
それを ma とおき,b で割った商を n とおくと,
ma = bn + 1
つまり,am − bn = 1 となり(m, −n) は整数解になっている。
※の証明(背理法)
ia と ja ( i > j ) を b で割った余りが同じだと仮定すると,(i − j)a は b の倍数となるはずだが,1≦ i − j < b かつ a と b は互いに素なのでこれは矛盾。
問題1-3での集合 Zp の要素は、0 と p-1 以下の自然数で、pは素数ですので、 Zp の 0 以外の要素と p は互いに素の関係にあります。先の証明の内容「a と b が互いに素なとき a, 2a, 3a, ⋯, (b−1)a を b で割った余りは全て異なる」で、a を 1、b を p とすると、Zp の 0 以外の要素 1, 2, ……, p-1 をpで割った余りは全て異なるということになります(p よりも小さい自然数を p で割るので、そのときの商は 0 で、割られる数そのものがそのまま余りとなります)。

さて、集合 Zp についてですが、この集合は演算+(加算)、演算✕(乗算)に関して体ではありません。Zp は、0 と p-1以下の自然数(正の整数)ですので、演算に関する逆元が存在しません。ZpZ から整数環の類推も働きます。

似たような話が、結城浩『数学ガール/フェルマーの最終定理』に載っています。整数環・剰余環・有限体の話です。

長くなりそうなので、今回はここまで。

2019/11/03

体(数学)についての理解を深める問題

エミール・アルティン『ガロア理論入門』には、各節ごとに訳者(寺田文行)による問題がついています。理解を深めるために、その問題を解いていきます。

とは言っても、わからないことが多く、本の解答を見てもわからないところもあるので、解答の仕方に冗長なところがあったり、言葉の使い方を含め誤りがある可能性がありますのでご注意ください(問題自体は本そのままを載せていますが、解答は私の解答なので……)。

第1章第1節の問題は以下です。
問題1-1
(1) 2要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。
(2) 3要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。

問題1-2
(1) a、bを整数とするとき、a+biの全体は体をつくらない。理由を述べよ。
(2) a、bを有理数とするとき、a+biの全体は体をつくる。これを証明せよ(この体をガウスの数体という)。

問題1-3
pを素数とし、
Zp={0, 1, 2, …, p-1}
とする。a∈Zp、b∈Zpのとき、a⊕b、a○bをそれぞれa+b、abをpで割ったときの余り、と定める。すると集合Zpは演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。

問題1-4
有限個の要素からなる体を有限体という。有限体q個の要素をもてば、の任意の要素xxqxを満たすことを証明せよ(実は有限体はすべて可換であることが証明される)。

問題1-1 (1) 2要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。

2要素だけからなる体は{0, 1}なので(演算表ではないですが、)、
(和)0+0=0、0+1=1、1+0=1、1+1=0
(積)0×0=0、0×1=0、1×0=0、1×1=1

(2) 3要素だけからなる体の和と積の演算表をつくれ。

3要素だけからなる体を{0, 1, a}とすると、
(和)0+0=0、0+1=1、0+a=a、1+0=1、1+1=a、1+a=0、a+0=a、a+1=0、a+a=1
(積)0×0=0、0×1=0、0×a=0、1×0=0、1×1=1、1×a=a、a×0=0、a×1=a、a×a=1
※本の解答は集合を{0, 1, 2}としていた。

問題1-2 (1) a、bを整数とするとき、a+biの全体は体をつくらない。理由を述べよ。

乗法について逆元をもつとは限らないため。s+tiの逆元は1/(s+ti)だが、s、tを整数とするとき、1/(s+ti)はa+bi全体の集合の要素ではないため。

(2) a、bを有理数とするとき、a+biの全体は体をつくる。これを証明せよ。

(略)定義をそれぞれ確かめる。

問題1-3
pを素数とし、
Zp={0, 1, 2, …, p-1}
とする。a∈Zp、b∈Zpのとき、a⊕b、a○bをそれぞれa+b、abをpで割ったときの余り、と定める。すると集合Zpは演算⊕、○のもとで可換体であることを示せ。

イメージしにくいので、具体例から考えてみる。

p=2のとき、Z2={0, 1}
和と積の演算表は問題1-1(1)で求めている。それに基づき、a⊕b、a○bの演算表を作ってみると、
(⊕の演算表)0⊕0=0、0⊕1=1、1⊕0=1、1⊕1=0
(○の演算表)0○0=0、0○1=0、1○0=0、1○1=1
となり、可換体となっている。

p=3のとき、Z3={0, 1, 2}
これも問題1-1(2)で和と積の演算表を作っており、p=2のときと同様に、a⊕b、a○bの演算表を作ることができる。

これらから見ると、a+bとa⊕b、abとa○bの演算結果は同じになる。これでは証明とは言えない。ちょっと方向性を変える。

問題文から、a⊕b、a○bはそれぞれa+b、abをpで割ったときの余りであるので、それぞれの商をS、Tとすると、
   a+b=Sp+(a⊕b)
   ab=Tp+(a○b)
と表すことができる。

あ、modを使うのですか、ね?

***

問題1-3について、本の解答を読んでもまだよくわからず……。
出直してきます。

ブログ アーカイブ