「真空」とは真に空の状態のことで、一般的には空気のない状態のことを意味している。
おそらく古の人々は、何もないという意味で空(そら)に空(くう)の字を当て表現していたのであろうが、空気やその他の、目に見えないものが存在し、それを知ることによって真に空、つまり「真空」という呼び名が生まれたのだと想像する。
人は言葉によってものごとを考え、また他人に伝達し、その世界の把握に役立てているが、その原理とは、ものごとに名を与え、自分自身で制御できる範疇に取り込んでいくということであろう。
しかし、何もない、虚無に名を与えると、それがあたかも存在するように扱ってしまうということがある。
たとえば、「無」という言葉。知らず知らずのうち、「そこには無が存在する」ということがある。「無」というものがあたかも存在しているように錯覚してしまう。
何も存在しないものに名前をつけるなということではない。存在しないものに名前をつけないでいると、世界の大半のものが失われる可能性がある。
ただ、そのことに自覚的でいたいと思う。
真空は何もないために、その状態がポツンとあるわけではない。少なくとも地球上では何らかの物質で場所が占められ、真空は瞬く間になくなってしまう。
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