清水義範さんの『独断流「読書」必勝法』の目次には、有名な文学作品が並んでいました。『坊っちゃん』にはじまり、『ロビンソン・クルーソー』『伊豆の踊子』『ガリヴァー旅行記』など。目次にタイトルが掲載されている作品を数えると、20個ありました。
その20作品のうち私が読んだことのある作品は3つ、そしてその3つのうち2つは読んだことはあるが内容は覚えていないという状況です。ちなみに清水義範さんの作品を読むのも初めてであると思います。
いま「思います」と書きました。清水義範さんの名前は知っています。知っているということは、ひょっとすると、どこかで作品にも出会っているかもしれません。清水さんの作品であると気づかずに読んでいるものもあるかもしれません。いま覚えていることを書けば、清水さんは文体模写を得意とする作家さんで、ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』のパスティーシュである「船が洲を上へ行く」という短編を書いています。桃太郎などの昔話を下敷きに、柳瀬尚紀訳『フィネガンズ・ウェイク』の文体模写をしています。
『独断流「読書」必勝法』に挙げられている作品も、その作品名はどこかで聞いたり読んだりしたことがあるものです。目次にはタイトルしか書かれていませんが、それぞれの作者は誰であるかを答えることができます。読んではいませんが、どんな小説なのかいうことができるものもあります。
読んだのに忘れたものがある一方で、読んでいないのに知っているものもある。本を読んでいるとはどういうことでしょうか。読んだのに何も覚えていないときに、その本を読んだといえるのか、読んでいないのにその本について語ることができるとき、その本を読んでいないといえるのか。
そういったことをテーマに、フランスのピエール・バイヤールという人が『読んでいない本について堂々と語る方法』という本を書いています。本を読んでいるかいないかを判断することはむずかしい。他人もさることながら、自分のことでもむずかしいといいます。
バイヤールは、読んでいない本について語る場合の心がまえとして、4つのことを挙げています。「気後れしない」「自分の考えを押しつける」「本をでっちあげる」「自分自身について語る」。読書は、多かれ少なかれ、独断流となります。本について語ることもまた然り。言ったもの勝ちです。
少なくとも文体模写は、その文体を知らないことには模写することはできません。文体模写の名手といわれる清水さんの『独断流「読書」必勝法』にはどのようなことが書かれているのでしょうか。
まだ読んでいません。
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