2019/08/16

不動点パズル09:反転(問17の解答)

(前回はこちら

機械に、ある記号列 x を入力すると、ある記号列 y をもたらす。この機械には4つの規則がある。
規則Q Qx → x
(任意の記号列 x に対して、記号列 Qx は x をもたらす)
規則C x → y ならば、Cx → yQy
(x が y をもたらすならば、Cx は y の随伴 yQy をもたらす)
規則R x → y ならば、Rx → yy
(x が y をもたらすならば、Rx は yy、すなわち y の反復をもたらす)
規則V x → y ならば、Vx → y
(x が y をもたらすならば、Vx は y の反転をもたらす)

今回は問17について。説明が冗長に、わかりにくくなってしまっている。

問17 記号 Q と C だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものはただ一つしかないことが証明できる。
(1) しかしながら、記号 Q、C、V だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものはいくつも存在する。それは何種類あるだろうか。
(2) また、記号 Q、R、V だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものは何種類あるだろうか。

記号 Q と C だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものは、CQC である(問1解答参照)。しかし、問1の解答では、それ自身をもたらす記号列を作ってみたというだけで、ただ一つしかないことの証明にはなっていない。そこでまず、記号 Q と C だけを使った記号列で、それ自身をもたらす記号列は CQC ただ一つしかないことの証明を考えてみよう。

記号 Q と C だけを使った記号列で、それ自身をもたらす記号列を x とすると、
x → x ・・・・・①
となるような記号列 x を探す。

仮にこの記号列が Q からはじまる記号列だとして、x = Qy とすると、①は、
Qy → Qy
となる。これは、規則Q に反する(規則Q では、Qy → y)。よって、x は Q からはじまる記号列ではなく、C からはじまる記号列となる。

x = Cx1 とすると、①は、
Cx1 → Cx1 ・・・・・①’
と書ける。規則C のかたちをしているが、これを成り立たせるには、x1 は記号 Q を含んでいなければならない。そこで、x1 = yQz とすると、①’は、
CyQz → CyQz ・・・・・①”
と書ける。随伴のかたちとなるには、z = Cy となるため、さらに書き換えると、
CyQCy → CyQCy ・・・・・①'''
となる。このとき、規則C の条件より、
yQCy → Cy ・・・・・②
とならなければならない。

(y を抜いた記号列であれば、QC → C となり、規則Qを満たす。このとき、それ自身をもたらす記号列は CQC である。)

y は、Q からはじまる記号列ではないので(規則Q に反するため)、Cからはじまる記号列である。y = Cy1 とすると、②は、
Cy1QCCy1 → CCy1 ・・・・・②'
と書ける。規則C のかたちをしているが、これを成り立たせるには、y1 は記号 Q を含んでいなければならない。そこで、y1 = z1Qz2 とすると、②'は、
Cz1Qz2QCCz1Qz2 → CCz1Qz2 ・・・・・②'
と書ける。随伴のかたちとなるには、z2 = CCz1 となるため、さらに書き換えると、
Cz1QCCz1QCCz1QCCz1 → CCz1QCCz1 ・・・・・②''
となる。このとき、規則C の条件より、
z1QCCz1QCCz1QCCz1 → CCz1 ・・・・・③
とならなければならない。

以下、同様の議論の繰り返しとなる。そのため、記号 Q と C だけを使った記号列で、それ自身をもたらす記号列は CQC 以外に求めることができない。

(1) 記号 Q、C、V だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものはいくつも存在する。それは何種類あるだろうか。

(解答)
Q からはじまる記号列でそれ自身をもたらすものは存在せず、C からはじまる記号列でそれ自身をもたらすものは CPC ただ一つであることは先に確認した。そこでここでは、V からはじまる記号列でそれ自身をもたらすものを探す。

記号 Q、C、V だけを使った記号列で、それ自身をもたらす記号列を x とすると、
x → x ・・・・・①
となるような記号列 x を探す。

x は V からはじまる記号列であるので、x = Vx1 とすると、①は、
Vx1 → Vx1 ・・・・・①'
と書ける。このとき規則V の条件より、
x1[Vx1] ・・・・・②
とならなければならない。

反転のかたちであるため、x1 は、V からはじまる記号列となり、x1 = Vx2 とすると、②は、
Vx2[VVx2] ・・・・・②
と書ける。このとき規則V の条件より、
x2 → VVx2 ・・・・・③
とならなければならない。

問4で、任意の記号列 y について、CQyC → yCQyC となることを求めた。ここで y = VV とすると、CQVVC → VVCQVVC となり、③を満たす。
したがって、求める記号列(の一つ)は、
x = Vx1 = VVx2 = VVCQVVC
となる。

記号列の反転について、反転の反転はもとの記号列となる。記号列 x の反転の反転は、記号列 x である。先ほど③の式を
x2 → VVx2 ・・・・・③
としたが、たとえばここで、
x2[VVx2] ・・・・・④
とすることもできた。③は、反転の反転はもとの記号列であることを意識している。

仮に、④の条件ですすめていくと、x2 が V からはじまる記号列として置き換えて、もう一度、規則V のかたち
だから、とすすめていける。

先ほどは、CQyC → yCQyC を利用して、y = VV として、VVCQVVC を求めたが、④からさらにすすめていけば、yCQyC の y が VVVV であるとき、VVVVVVであるとき、……、つまり、V が偶数個のときに、それ自身をもたらす記号列となる。V が偶数個であるというのは、記号列の反転の反転はそのままであるということと対応している。



(2) また、記号 Q、R、V だけを使った記号列で、それ自身をもたらすものは何種類あるだろうか。

(解答)
(1)での考え方と同じで、(1)では CQyC → yCQyC(記号 Q と C を使った記号列。y は偶数個の V )を使ったが、ここでは問11で求めた RQyRQ → yRQyRQ を使う。y が偶数個の V である記号列 yRQyRQ(たとえば、VVRQVVRQ など)が、それ自身をもたらす記号列となる。

つづく

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