2011/03/22

原子力発電所の安全対策について

原子力発電所の安全対策についてのまとめです。

「勉強ノート」ですので、正確性に欠けている可能性がありますので、詳細を確認したい場合は、他サイトをご確認ください。

まずは、前提として、「原子爆弾のような爆発は起りません。」

原子力発電でも原子爆弾でもウランを使うことに違いはないのですが、ウランの質(?)が違います。原子力発電での燃料として使用されるウランは、核分裂しやすいウラン235と核分裂しにくいウラン238の混合物です。ウラン235が3~5%、ウラン238が95~97%の割合です。一方、原子爆弾は、ウラン235をほぼ100%集めたものです。原子爆弾では次々と核分裂が起こりますが、原子力発電でのウラン燃料では、次々と核分裂が起こるわけではありません。したがって、原子爆弾のような爆発は起こらない、ということになります。

しかし原子力発電所では、放射性物質を扱うことになるため、安全性が求められることになります。

原子力発電所の安全対策は「多重防護」を基本に考えられ、次の三段階の安全対策を実施しています。
  1. 異常発生の防止
  2. 異常拡大の防止
  3. 放射性物質の異常放出の防止
これらについて、福島第一原発の状況も踏まえて確認してみたいと思います。



1.異常発生の防止
まず第一に、事故を起こさないようにするために、異常の発生を防ぐことが重要になります。このため、原子力発電所では十分に余裕をもった設計、厳重な品質管理、綿密な点検と検査を行い、異常や故障を起こさないようにしています。福島第一原発でも、地震発生時、4~6号機については定期検査中であったため、運転はしていませんでした。

(1)余裕のある安全設計
原子力発電所では、各機器について、安全上十分余裕のある設計を行い、また、機器や材料は高性能・高品質のものを使用しています。また、建設場所についても、日本は地震が多い国でもあるので、地質調査や地質構造、活断層や過去の地震等、様々な調査を経て設計しています。また、津波対策としても水面からの高さ等、検討したうえで設計されています。

しかし、今回の地震は、想定を上回る規模。

3/22付NHKニュース(NHK「かぶん」ブログ)では、
  • 東京電力が想定していた津波の高さは、▽福島第一原発では最大5.7メートル、▽福島第二原発では最大5.2メートルで、いずれも、想定の2倍を超える高さの津波が襲っていました。
  • 東京電力は、「想定していた地震の規模は、マグニチュード8.0と実際の地震より『1』小さく、今回は空前の規模だと認識している。今後原子炉を安定させたうえで、津波の被害について検証する必要がある」。
と報じています。

想定が甘かったのか、それとも想定は正しかったが、それ以上だったのか。ここについては私には判断できませんが、少なくとも今後の津波対策については影響がでてくると思います。

(2)フェールセーフシステム
フェール・セーフ・システムとは、万一、装置自体が故障した場合に安全方向に働くシステムのことです。例えば、ストーブなどで、倒れたら火が消えるような機能(安全装置)があるものがありますが、これが「フェールセーフ」の考え方です。原子力発電所の例でいえば、制御棒駆動装置用の電源がなんらかの原因で切れた場合、制御棒そのものの重さにより制御棒が自動的に炉内に落下し、原子炉を安全に停止できるようになっています。

(3)インターロックシステム
インターロック・システムとは、万一、人間が間違った操作をしても動かないシステムのことです。オートマティックの自動車の場合ギアの位置がP(パーキング)にないときはエンジンがかからないなど。原子力発電所の例では、運転員が誤って制御棒を引き抜いたとしても、出力が過大にならないように、ある出力以上では制御棒の引き抜きができないようになっているなど、誤った操作による事故を防止するシステムです。

2.異常拡大の防止
次に、万が一異常が起こってしまった場合、事故に拡大しないような措置が取られています。
具体的には、
(1)異常を早期に検出する装置
(2)自動的に原子炉を停止する装置
が備わっています。

福島原発では、地震発生の際に、きちんと原子炉が自動停止しています。


3.放射性物質の異常放出の防止
そして、万が一事故が起こってしまった場合、周囲への影響を最小限に抑えるためにいくつかの安全装置を備えています。
ひとつは、非常用炉心冷却装置(ECCS:Emergency Cone Cooling System)です。そして、放射線・放射線物質の拡散を防止するために、5つの障壁を設けています。

(1)非常用炉心冷却装置(ECCS)
例えば、原子炉につながる大きな配管が瞬間的に破断して一次冷却材が大量に漏れるという事故が起き、原子炉内の水が減少したような場合、自動的に炉心に水を注入して、高温の燃料棒を冷却し、燃料棒が溶けたりこわれたりするのを防ぐための装置です。

福島第一原発では、この非常用炉心冷却装置が(おそらく津波のためだと思いますが、)故障し、原子炉の熱を冷却することができず、燃料棒が溶けるメルトダウンとなりました。

炉心への水の注入ができないため、現在海水を注入している状況です。

(2)5重の障壁
a.ペレット
ペレットはウランの酸化物という化学的に安定したものを高温で陶磁器のように焼き固めたものです。核分裂はペレットの中で起こります。核分裂によってできる核分裂生成物(放射性物質)もペレットの中にできます。大部分の放射性物質はペレットの中に閉じ込められるようにしています。

b.被覆管
さらにペレットを被覆管で覆い、燃料棒としています。

c.原子炉圧力容器
第3の障壁として、燃料棒(を集めた燃料集合体)の周りを、鋼鉄製の圧力容器で囲み、放射性物質が外部に出ないようにしています。

d.原子炉格納容器
圧力容器の外側には、さらに鋼鉄製の格納容器があり主要な原子炉機器を包んでいます。原子炉で最悪の事態が発生した場合でも、原子炉から出てきた放射性物質を閉じ込めておくとともに放射能を減らし、周辺における放射線の影響を低く抑えるためです。

福島原発の現状は、この格納容器内の圧力が高くなってしまい、水素爆発を避けるため(=格納容器の破損を避けるため)、数回にわたり「格納容器内の圧力を降下させる措置」を取っています。「圧力を下げる=空気を通す」となるので、この作業の後に周囲のSv量が増えたということがニュースでよく報じられています。

e.原子炉建屋
最後に格納施設として厚いコンクリートで造られた原子炉建屋で覆い、放射性物質の閉じ込めに万全を期しています。

しかし、水素爆発と思われる爆発で、原子炉建屋は壊れてしました(1・3・4号機)。しかし、壊れてしまっていたからこそ、「放水」による冷却作業が可能であった、とも言えます。


素人考えで恐縮ですが、今回の福島原発について、地震が直接原因というよりは、「地震による津波」が大きな原因となっています。(おそらくそう思っている方が多いかと思います。)津波により外部電源の供給系統が使用できなくなり、そのため冷却機能ができなくなったと思われます。

本日、外部電力の回復のニュースが流れました。外部電力復旧は冷却機能の復旧を意味します。いち早い復旧を望んでおります。

参考サイト
関西電力九州電力四国電力中国電力中部電力東京電力東北電力北陸電力の各HP
NHKニュースNHK「かぶん」ブログ

【追記】
使用済み燃料プールのことを一言も書いていませんでした…。放水は主に燃料プールに向けて行われています。

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