パソコンに保存されているファイルを整理していると、昔書いたものがみつかった。先日の記事「小田原市は神奈川県にある(前編・後編)」は、昔書いたものを再構成したものである。
他にもいくつか見つかった。せっかくなので公開してみる。よくミステリーを読んでいたので、ミステリーに関するものが多い。雑文の感が否めない。
以下に記載するのは、おそらく鮎川哲也さんの短編集『五つの時計』を読んだあとに書いたものと思われる。
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本格推理小説でしばしばみられる「密室」と「アリバイ」は言葉としては2つにわかれているが、考え方としては、同一のものであるといえる。
ミステリー読者にとって非常になじみのあるこれら2つの言葉は説明をしなくともどのようなことかというのはわかっていると思うが、「密室」というのは、ある部屋があり、その中に他殺と思われる死体があるが、その部屋に犯人の出入りした痕跡がない、あるいは出入りできないといった状況を作り出したことであり、一方、「アリバイ」というのは、反抗時刻と思われている時間帯、疑わしい容疑者が他の行動をとっていたという状況を作り出すことである。
時間と空間。この違いが言葉の違いと考えてもよさそうだ。
しかし、時間と空間は切っても切れない関係にある。密室とアリバイのトリックを見ると容易に理解できるだろう。
本物の密室、あるいは完全なアリバイではミステリーとしてあまり成功すると思えない。不可能に見えるが、実は可能である、それを解くのが作者、探偵、読者の楽しみである。
アリバイに「時間の檻」という言葉を使うと、密室には「空間の檻」と付けたくなるが、合わせると「時空の檻」ということになる。
アリバイは時間のことだけで成り立っているわけではない。犯行時刻に他の「場所」にいた、というのも十分条件として挙げられるし、密室の場合も、その「時間」には部屋に入れなかったというのもある。
推理作家はこの「時空の歪み」を上手く創り出そうと日々頭を働かせる。
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ファイルの作成日時を確認すると、2009年2月22日だった。もっと前に書いた記憶があるので、手書きの文章を打ち直したのかもしれない。
時を経たものなので何かひねりを加えたかったが、思いつかなかった。
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