『五輪書』の教えをコミュニケーションに活かそうというのが、今現在の私のテーマです。
本日は、「拍子」について。
「地の巻」に「兵法の拍子の事」を書いている部分があります。
物事に付け、拍子は有る物なれども、とりわき兵法の拍子、鍛錬なくては及びがたき所也。と始まります。
どんな物事でも「拍子」というものがあります。他の言葉でいえば、「リズム」とか「波」とか、「調子」とか。
この「拍子」を知ることが兵法では大切だと、宮本武蔵は『五輪書』で述べています。
先づあふ拍子をしつて、ちがふ拍子をわきまへ、大小・遅速の拍子の中にも、あたる拍子をしり、間の拍子をしり、背く拍子をしる事、兵法の専也。此そむく拍子わきまへ得ずしては、兵法たしかならざる事也。兵法の戦に、其敵其敵の拍子をしり、敵のおもひよらざる拍子をもつて、空の拍子を知恵の拍子より発して勝つ所也。
「合う拍子」を知り、「違う拍子」を知り、大小・遅速の拍子の中でも「合った拍子」、「間の拍子」、「背く拍子」を知ること。この「背く拍子」を知らなければ、兵法にはなりえない。戦いにおいては、その敵その敵の拍子を知り、敵が思いもよらない拍子でもって、「空の拍子」を「知恵の拍子」から発して勝つ。
様々な「拍子」があります。
コミュニケーションにおいては、相手を負かすために行っているのではないので、「勝つ」ということにこだわる必要はありません。
しかし、相手の「拍子」を知ることは、とても大切だと思います。
話し手にはそれぞれの拍子があります。また、話の中でも大小・遅速の拍子があります。
話を聞くときには、その拍子に合わせることが基本です。コーチングの言葉を借りると「ペーシング」。
兵法では、敵が思いもよらない予想外の拍子で、相手の拍子を崩し、そこを打つために「背く拍子」が重要になります。
コミュニケーションでは、相手を打つ必要はありませんが、私は「背く拍子」も場合によってはありだと思っています。
相手の話をさらに深く聞くための「背く拍子」。
話を展開させるための「背く調子」。
音楽でいえば、「変調」にあたるかもしれません。
音楽で思い出しましたが、ベースの音の出し方のテクニックのひとつとして、「ゴーストノート」というのがあります。
これは、ミュート(指板まで弦を抑えない)した弦を引くので、はっきりとした音程がない音のことですが、この「ゴーストノート」があるのとないのとでは、リズム感・グルーヴ感が全く異なります。
(以下は、「ベース ゴーストノート」で検索したYou Tube動画)
また、ベースではよく「ウラの拍」というのも大切にされます。
「タッ、ツッ、タッ、ツッ」をオモテの拍とすれば、「ツッ、タッ、ツッ、タッ」がウラの拍。
話し手がギターとすれば、聞き手はベース。
ベースのリズム感・グルーヴ感が、ギターのうねりを引き立たせます。
コミュニケーションは、ジャム・セッション。
話し手は、聞き手の拍子に左右されます。
聞き手は、「ゴーストノート」や「空の拍子」、「隻手の音」も織り交ぜつつ、話し手を引き立たせるために聞いていきます。
そして、朝鍛夕錬です。