天禄元年(970年)に編集された『口遊(くちずさみ)』の「竹束篇」として載っている問題です。
以下、『日本人の数学 和算』からの引用。
また「竹束篇」として、竹をたばねる問題がある。このたばね方はまん中を三本とし、次に九本、十五本、二十一本とたばねていく。いちばん外側が二十一本のとき、全部で何本かという問題で、その求め方は、いちばん外側の本数を数え(これをaとする)、これに三を加えて二乗し、十二で割れとしている。図がある方がわかりやすいと思いますので、ちょっとWEBより拝借。
下平和夫『日本人の数学 和算』(講談社学術文庫)p.45
(『放課後の数学入門』「§2数列」より)
さて、引用内の解法の通りにやってみると、いちばん外側の本数は21本で、これに3を加えて2乗し、12で割れということだから、
(21+3)2/12で、48本となります。
=242/12
=576/12
=48
実際に計算すると、まん中を3本とし、次に9本、15本、21本とたばねていくので、
3+9+15+21 = 48で48本となり、合っています。
ちょっと不思議に思いました。
なぜ3を加えて2乗して12で割ると答えが出てくるのか?
数列の復習とともに考えていきます。
問題を再掲。漢数字をアラビア数字に変えました。
竹をたばねる問題がある。このたばね方はまん中を3本とし、次に9本、15本、21本とたばねていく。いちばん外側が21本のとき、全部で何本か
さて、「数列の復習とともに」とさきほど書きましたが、それはこの問題を見たときに数列として扱えそうだと思ったからです。
つまり初項が3、第2項が9、第3項が15、第4項が21、…というような数列です。
この数列をanとして、問題を焼き直し、一般化すると、
(1) 数列anの一般項を求めよ。という問題になるかと思います。
(2) 第n項までの合計snを求めよ。
では、まずは数列anの一般項から求めていきたいと思います。
(1) 数列anの一般項
数列anは、問題文に与えられていることから以下のような数列です。
{an} = { 3, 9, 15, 21, ...}
さて、私の知っている数列といえば、「等差数列」「等比数列」「階差数列」「フィボナチ数列」くらいですが、どれかにあてはまるか…。
と思ったら、「等差数列」があてはまりそうです。
初項が3、公差6の等差数列。
ということは、数列anの一般項は、
anです。
= 3 + (n - 1)6
= 6n - 3
では、公差6はどこから来たのか?
それを考えるヒントが下記のページにありました。
『暗号山上憶良』「三つの平方数」図を拝借。
束を3つのひし形にわけて考えると、初項1、公差2の等差数列が3つあることがわかります。
わかりやすくするため、図に印を入れてみました。
ここまで来ると、次の(2)は解けそうです。
(2) 第n項までの合計sn
(1)で一般項 an = 6n-3 がわかっていますので、等差数列の和の公式を使いたいと思います。
snでは、冒頭の解法「いちばん外側の本数を数え、これに3を加えて2乗し、12で割れ」とこの等差数列の和snとの関係はどうか?
= {n(3+ 6n-3)}/2
= 6n2/2
= 3n2
「いちばん外側の本数を数え、これに3を加えて2乗し、12で割れ」を式で表わすと、以下のようになります。
{(6n-3) + 3}2/12これを解いてみると、
{(6n-3) + 3}2/12なるほど、一致しました。
= (6n)2/12
= 36n2/12
= 3n2
等差数列の和の公式は、「初項と第n項を足して、nをかけて2で割れ」とも表現できます。
『口遊』での解法を数列の用語で説明すると、「第n項に初項を加えて2乗し、公差に2をかけた数字で割れ」ということができそうです。
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