(前回のつづき)
漱石全集に載っている俳句より、「ホトトギス(時鳥、郭公、子規)」が使われているものを以下に挙げる。ホトトギスは夏の季語で、漱石がホトトギスを使った句ではそのほとんどが季語として使われているが、1219だけは季語ではない(1219の季語は「蚤」)。俳句の頭に付いている数字は、漱石全集第17巻での俳句の通し番号である。
明治22年1 帰ろふと泣かずに笑へ時鳥2 聞かふとて誰も待たぬに時鳥
明治25年38 鳴くならば満月になけほとゝぎす
明治28年160 時鳥あれに見ゆるが知恩院190 時鳥たつた一声須磨明石191 五反帆の真上なり初時鳥192 裏河岸の杉の香ひや時鳥193 猫も聞け杓子も是へ時鳥194 湖や湯元へ三里時鳥195 時鳥折しも月のあらはるゝ196 五月雨ぞ何処まで行ても時鳥197 時鳥名乗れ彼山此峠299 時鳥物其物には候はず300 時鳥弓杖ついて源三位513 明け易き夜ぢやもの御前時鳥
明治29年528 時鳥馬追ひ込むや梺川819 さもあらばあれ時鳥啼て行く857 国の名を知つておぢやるか時鳥868 琵琶の名は青山とこそ時鳥
明治30年1130 浪人の刀錆びたり時鳥1184 郭公茶の間へまかる通夜の人1185 蹴付たる讐の枕や子規1186 辻君に袖牽れけり子規1219 逃すまじき蚤の行衛や子規
明治33年1807 京に行かば寺に宿かれ時鳥1819 貧乏な進士ありけり時鳥
明治35年1844 病んで一日枕にきかん時鳥
明治37年1891 十銭で名画を得たり時鳥
明治40年1955 時鳥厠半ばに出かねたり
全部で29句。内訳は「時鳥」24、「子規」3、「ほとゝぎす」1、「郭公」1であり、基本は「時鳥」であるといってもいいだろう。
「子規」「郭公」が使われている句が、明治30年に固まっているのには、なにかわけがあるのだろうか。俳句以外の例では、作成時期を考慮していなかったので、詳細を確認する際に合わせて確認したい。
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