2013/02/05

言葉使い

書店で、柳瀬尚紀さんの『日本語は天才である』という文庫本を見つけ、即購入。

柳瀬さんといえば、ジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』を訳した人だと覚えていたからです。

とはいえ、『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』は未読。


大学生のころ、『ユリシーズ』を書店で見つけて立ち読みした覚えがありました。

ジェームス・ジョイスの名前も知らなかった英米文学科の学生の頃です。


「ユリシーズ」というのが、ギリシア神話の「オデュセイア」であることは知っていたので、ギリシア神話関連の物語かと思い手に取って中を覗くと、言葉の氾濫です。

ルビがいたるところに振ってあり、漢字も当て字が多かったり、見たこともない単語が出ていたり、と。


買いたいと思いましたが、当時ハードカバーで、学生の身には少し高かった…。

そういえば、もう文庫本になっているかな。

後で探して見よう。


話を戻して、『日本語は天才である』を読んで思ったのは、柳瀬さんは「言葉使い」。

言葉遣いではなく、翻訳という作業を通して言葉を操る、魔法使いという意味での言葉使いです。


"You are a Full Moon.(きみは満月だ)"と声をかけられたお月さんが、"You are a fool, Moon.(きみはバカだ、お月さん)"と聞き間違えて怒った、という話で、"You are a Full Moon."をどう訳すか。

普通に訳すと意味は通じません。かといって英語の注釈を入れてしまうと興ざめしてしまいます。

日本語で聞き間違いができるような訳し方を考えなければなりません。

それを柳瀬さんはやってのけます。
「されば、かの満月か」と、声をかけられたのに、
「去れ、バカの満月か」と、聞き間違えたからです。
私もちょっと考えましたが、さすがに上手い訳は出てきませんでした。


翻訳での苦労話や楽しさ、そして漢語や英語を上手く取り入れる日本語の柔軟性をあらためて教えてくれる良書です。


私も「言葉使い」になりたいと思いました。


日本語は天才である (新潮文庫)
日本語は天才である (新潮文庫)

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