2012/06/19

患者の身になる技法

神田橋條治さんの『追補 精神科診断面接のコツ』に「患者の身になる技法」という章があります。

そこに、先日の記事でも紹介した「離魂融合」について書かれていましたので、自分なりにまとめてみたいと思います。


「患者の身になる技法」には、以下の表が載っていました。

(『追補 精神科診断面接のコツ』より作成)

患者の身になる技法を、「①現実に場所を共有する」技法、「②イメージで場所を共有する」技法、「③現実に身体を共有する」技法、「④イメージで身体を共有する」技法の4つに分けて説明していました。


「①現実に場所を共有する」というのは、患者の置かれている現実の場に身を置くという技法です。

本の中で挙げられているでいうと、例えば「患者が座っていた椅子に腰掛けてみる」「保護室の中に実際に入ってみる」「ベッドに実際に寝転んでみる」など、実際に患者の空間的な位置に自分も立ってみるということです。

患者からは自分はどのように見えているのか、どのような風景がみえるのか、座り心地や寝心地などの感覚も含めどのように感じているのか、実際に患者と場所を共有することで患者の身になってみるというやり方です。


往診であれば、直截的に場所を共有することができますので「①現実に場所を共有する」といえますが、診察室での診察など、実際に場所を共有することができないときもあります。

その場合に「②イメージで場所を共有する」方法を利用できます。

例えば、間取図を書いてもらうと、自宅や部屋のイメージが共有されます。

あるいは、話を聞いているときにイメージづくりをして、話題になっている場を視覚化していくことです。


③の「現実に身体を共有する」技法は、コーチングでいうところの「ペーシング」とか「ミラーリング」のスキルです。

患者の姿勢や動作と同じ姿勢や動作をしてみる。

同じような口調やアクセントや言葉遣いをしてみる。


そして、④の「イメージで身体を共有する」とは、③の「ペーシング」「ミラーリング」をイメージでする方法ということになります。

『追補 精神科診断面接のコツ』から引用すると、
「患者の身になる」技法としての離魂融合現象では、体全体、躰の感覚全体が向こうに移ってしまうようになる。そして、こちら側の肉体と意識とは、ほとんど死に体というか、意識にのぼらなくなり、患者の肉体に重なっている部分が意識し、体験しているような錯覚が生じてくる。いや正確には生じてくるように努力、工夫するのである。つまり、こちら側の自分の心身に注意が全く向かず、どんな姿勢をしているのか、どんな表情か、どんな気分か認知されない状態をつくるよう努力するのである。

これが「離魂融合」という技法。

そして、この状態が完成されたときは、
患者の心性がつかめたような新鮮なひらめきが生ずることが多い。それまで見過ごしていた、患者のちょっとした動作や、表情に重要な意味が付加されるという場合が多い。
とのこと。


この本にも書かれていることですが、言葉は「イメージの画材」という性質もあります。

「離魂融合」という技法が、冒頭での表のように「イメージで身体を共有する」技法と位置づけられたことで、すこしイメージしやすくなりました。

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