まずどのようなことが現代思想なのかを知らない。思想というのも何となく哲学的なものというイメージしかない。おそらくは聞きかじったことがあることが多いのだろうが、このあたりで現代思想について少し整理したいというのがきっかけである。
『現代思想の教科書』には「世界を考える知の地平15章」という副題がついている。サブタイトルどおり15章で構成されていて、章題は以下である。
- 「現代思想とは何か」
- 「言語の世紀」の問い
- 記号とイメージの時代
- 無意識の問い
- 文化の意味
- 欲望とは何か
- 権力と身体
- 社会とは何か
- 情報とメディアの思想
- 文化産業と想像力
- 戦争について
- 宗教について
- ナショナリズムと国家
- 差異と同一性の共生原理
- 総括と展望
大学生のとき、言語学という分野があることを知った。別に授業で習ったというわけではなく、大学生協の本屋で言語学に出会った。フランソワーズ・ガデという人の『ソシュール言語学入門』という本である。ソシュールというのが誰なのかも、言語学というのがどのような学問なのかも知らなかったが、紫がかったピンク色の表紙で平積みされ目立っていた。大学1年生のときである。
英語学、国語学という分野があることは知っていた。英語学を専攻しようと思ってはいたが、専門課程の授業は2年生からであったため英語学が何であるのかも知らず、言語学という名前を知ったのは『ソシュール言語学入門』が最初だと思う。「入門」と付いていたので、読んでみようという気になり買った。
『ソシュール言語学入門』は、ソシュールが書いた(正確には、ソシュールの講義を受けた人の講義ノートをまとめた)『一般言語学講義』という本の解説であった。大学の授業で使われる本以外で専門書(?)を買って読んだのは初めてである。通読しても、あまりよくわからなかった。ただ、そこから言語学に関する本を独自に読みはじめるいいきっかけになった。
大学で何を専攻していたかと問われれば「言語学」と答えている。3年生か4年生のときに言語学科ができ、そこでの講義やゼミに参加していたが、所属としては文学部英米文学科の英語学専攻である。偶然ではあるが、言語学の勉強を先取りしていた。
『現代思想の教科書』はソシュールからはじまっていた。私と同じではないかと現代思想に親近感を持った。