2017/05/15

いまどこにいるのか

引き続き石田英敬さんの『現代思想の教科書』より。

石田さんは、今日における知と世界の関係について、「四つのポスト状況」という認識をしている。四つのポスト状況とは次の四つである。
  1. ポスト・グーテンベルク状況
  2. ポスト・モダン状況
  3. ポスト・ナショナル状況
  4. ポスト・ヒューマン状況
以下、なるべく自分の言葉で記述する。

「ポスト(post)」とは「○○以後、○○以降」という意味で、「ポスト・グーテンベルク状況」というのは、「グーテンベルク以後の状況」という意味である。

グーテンベルクといえば、活版印刷である。活版印刷はルネサンスにおける三大発明のひとつとされている(残り二つは、羅針盤と火薬)。活版印刷技術の発明発展は、書籍や新聞をはじめとする活字メディアを発展させた。本は知識の代名詞ともなり、知識の伝達流通が文化文明の発達に寄与し、生活も変化させた。「ポスト・グーテンベルク状況」というのは、活字メディアの文明圏が一区切りついて、次の段階へ入っているということである。大きな流れとしては、通信技術・情報技術の向上。書籍や新聞だけでなく、電話・ラジオ・テレビ・インターネットなど、様々なメディアが増えてきた。生活スタイルも変化し、社会も変化する。

「ポスト・モダン状況」は「近代(モダン)」が一区切りついた状況である。「啓蒙の時代」「理性による世界の進歩」など、近代的な価値観、世界観が少しずつ崩れはじめた状況である。「先進国」と「発展途上国」という言葉が示す価値観文明観、あるいは西洋至上主義など、絶対的な価値観が相対化され、多様化の時代に入ってきた。

「ポスト・ナショナル状況」は、単純に言えばグローバル化である。国民国家の枠組みを基礎としていたシステムは近代を特徴づけていたが、その枠組みの外、地球規模・宇宙規模の問題を解決する必要性も出てきた。国民国家を再考する時代である。

そして「ポスト・ヒューマン状況」は、元来人間が行なってきた活動が機械や情報によって担われている状況を指している。最近では人工知能(AI)がキーワードとして挙げられる。コンピューターの発達により、記憶の外部化が進んでいる。知能の外部化が進むことで私たちにどのような変化が訪れるのか。

以上の四つのポスト状況は四つに分けられるという意味ではなく互いに絡み合った状況であることを示している。『現代思想の教科書』は、主に20世紀の思想を追うことで現在の状況を理解し、これからの時代を見、これからどのように生きていくかを考えることを目的としている。

歴史は、終わった後で区切りをつけられ、名付けられる。近代(モダン)は区切られたが、現代はまだ「ポスト状況」であり、特徴づけられていない。過渡期である。「いま」というのはいつでも過渡期であるかもしれないが、変化の激しい時代であるということは間違いなさそうである。

流されるもよし、逆行するもよし。ただ、自分がどこにいるのかは認識しておきたい。