3人の男たちが座している。
「何をしているのですか?」と問うと、1人の男が答えた。
「レンガをしています」
「レンガ、ですか?」
「歌を連ねると書いて連歌といいます。最初の人が五七五の句をつくり、次の人が先の五七五の句に続く七七の句をつくり、さらに次の人はそれに続く五七五の句をつくり、次の人は七七――と、句を、歌を連ねていくのです」
歌を連ねているところに、レンガを積んでいる映像が重なる。
別の男が続けて言う。
「もう少し詳しく言うと、俳諧の連歌ですね。一般的に連歌は、百韻の形式といわれています。五七五の発句のあと、七七で2句目、次の五七五で3句目として、百韻の形式とは100句つくるということですが、ここでは36句としてしています。俳諧の連歌、歌仙形式の俳諧ですね。また、連歌は和歌の流れからできたものなので雅語を使うのが普通ですが、俳諧の連歌では俗語、俗言でもOKです。俳諧とは戯れごとです」
「ホック……」と、ひっかかった言葉をつぶやく。ホックがついたレンガ壁。
3人目の男が口を開いた。
「わしはいま最初の句、発句を考えとる。最初の句なので自由に詠むことができるが、いまこの場にふさわしい歌にしたい。発端の句だから発句じゃ。この発句であとの展開が変わるので、おもしろくもあり、難しくもある」
発句に四苦八苦。4×8=32 で、36句には足りない。四苦八苦でなく四九発句としてはどうだろうか。いや、敷く発句としよう。
発句を敷いてレンガを重ねていくイメージに変わる。
「発句には、切れがほしいのう」3人目の男が考え込む。一緒に発句を考える。
布きれの発句を敷いたレンガ壁
連歌にて徘徊をする男ども
切れがない。
創作とは捜索であり、俳諧の発句が俳句となるのはまだ先のことである。
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