「オレの方が背が高い」
「ボクの方が背が高い」
「いや、おいらの方が」
どんぐりたちが言い争っていた。だれも譲らない。お互いに自分の方が背が高いと言い張っている。このままだと埒が明かないので、どんぐりたちは「誰が一番背が高いのか、他の誰かに確認してもらおう」と言って、そこに通りかかったおじいさんに声をかけた。
「オレの方が背が高い」
「ボクの方が背が高い」
「いや、おいらの方が」
まだ、どんぐりたちは言い争っていた。
あるどんぐりが、おじいさんに尋ねた。
「ぼくたちの中で、誰が一番背が高いですか?」
おじいさんは、どんぐりたちを眺めた。どんぐりたちは、おじいさんの言葉を待った。
「みんな、小さくてあんまり変わらないように見えるねぇ。もっと大きくなったらわかるかもしれないねぇ」
どんぐりたちは、もっと大きくなろう、背を伸ばそうと思った。
どんぐりたちは芽を出し、少しずつ大きくなった。そして、まだ言い争っていた。
「オレの方が背が高い」
「ボクの方が背が高い」
「いや、おいらの方が」
おじいさんが傍らを通るたびに、おじいさんに尋ねていた。
「ぼくたちの中で、誰が一番背が高いですか?」
「もっと大きくなったらわかるかもしれないねぇ」
どんぐりたちは、もっと大きくなろうと、もっと背を伸ばそうとした。
十年経った。どんぐりたちはクヌギの木になった。そして、まだ言い争っていた。
「オレの方が背が高い」
「ボクの方が背が高い」
「いや、おいらの方が」
「ぼくたちの中で、誰が一番背が高いですか?」
おじいさんは、クヌギの木々を見上げて言った。
「みんな大きくてわからないねぇ。立派に育ったねぇ。誰が一番大きな実をつけるかねぇ」
クヌギの木々たちは、自分が一番大きな実をつけようと思った。
あるときから、おじいさんの姿が見えなくなった。背の高さを、実の大きさを見てくれる人がいなくなったクヌギの木々は、しばらくは毎年、実をつけていたが、そのうち枯れてしまった。
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