『国語辞典』を見る機会があり、目的の言葉を探していると、ふいに「形動タルト」という言葉が目に入ってきた。少し考えて「あ、形容動詞のタル・ト型の活用ということか」と気がついたが、「『形動タルト』とはどんな『タルト』だろう」と考えてしまった。
で、タルトである。
愛媛出身の人ならばわかってもらえると思うが、私がタルトでイメージするのは「一六タルト」である。私はあんこが好きではないので食べたことはほとんどないが、「一六タルト」のテレビCMの記憶が蘇る。『マルサの女』などの映画監督で有名な伊丹十三さんが出演していて、2人のおじさん(その片方が伊丹さん)がバスの最後部座席で「なんじゃったかの~」「『の』の字に巻いとって」「あれじゃがね」「名前の上に数がついとったんやがの~」というようなやりとりで、セリフはしっかりとは思い出せないが、2人が「一六タルト」の名前を思い出そうとしているCMである。
一六タルト以外にも、六時屋のタルトとか、ハタダの栗タルトとかのCMも流れていて、愛媛にいたときは、タルトといえばそういうお菓子であると思っていた。そう思っていたのは私だけではなさそうである(Wikipedia「タルト(郷土菓子)」参照)。
長じてから一般的なタルトを知り、タルトと聞いて松山の郷土菓子だけをイメージすることはなくなったが、それでもタルトと聞いて最初にイメージするものはロールケーキ状の形をした「一六タルト」のイメージであり、伊丹十三さんのCMである。一度固定されていたイメージはなかなか消えない。そのあとに、クッキー状の生地にクリームとフルーツを乗せた(私にとっては一般的ではないが)一般的な洋菓子のタルトのイメージが浮かんでくる。
「タルト」と聞いたときの私の脳内イメージは、郷土菓子のタルトが出てきて、伊丹さんが「あれじゃがね」と思い出そうとし、それから一般的なタルトが出てくる。タルトのイメージが動いている。もしかすると、これが「形動タルト」ではないか、と私は独り微笑んだ。
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